桜花
・・・ここ数日・・・強制的に眠らされて、目が覚めるとぜんぜん違う場所にいるという事が続いたので、今もまた自分がどこにいるのか、ちょっと不安になりますが・・・
あ、でも、ここは・・・
桜花の部屋です。
戦艦飛鳥の桜花の部屋のベッドの上です。
ああ、よかった。桜花はまたここに戻ってこられたのですね。
なんだか、とても長い悪夢から覚めたような気分です。
それにしてもここ数日の出来事は・・・一体なんだったのでしょうか。
本当におかしなことがいろいろあったので、今どういう状況なのか心配です。
それでとりあえず部屋から出てみます。
でもドアの向こうには軍令部の武装した警備の人がいるはず・・・かと思ったら、なんとびっくりです。
桜花の部屋の前の廊下には、木島さんや野田さんや艦長さんや、その他参謀部の人とか兵員の人までいっぱいで、なんだか桜花が起きてくるのを待ってたみたいなんです。
それで、桜花が部屋から出てくると、なぜか皆さん大喜びで、もう木島さんなんて「ああ、よかったよかった」って言って、なんだかちょっと目がうるうるです。
びっくりです。
これは一体どういうことなのか聞いてみると、野田さんが「なかなか起きてこないから心配だった」んだそうです。
それはそれは、どうもご心配お掛けして・・・
そういえば・・・桜花はなんで自分の部屋で寝ているのでしょう。
確か、私は・・・あの天井の高い赤いカーテンの部屋・・・みたいなんだけど本当はよくわからない軍艦の格納庫みたいな場所から、突然現れた武装した黒い服の人たちと、あとシホさんだかすめらさんだかいう人とかに連れ出されて、・・・その時すめらさんにピリッとやられて、眠ってしまって・・・
なんだかもう、本当にいろいろあって頭が混乱しそうです。
ああ、それに、あの・・・頭がふっとんでも起き上がってきたアドルフィーナさん・・・
・・・思い出すだけでぞっとします。
とにかく!今までの状況と、なんで桜花があんな目にあったのか軍令部にきちんと聞いてみなければ!
もう、今度という今度は、どんなにはぐらかされてもきちんと納得する説明をしてもらいますからね!
いくら桜花が間抜けだからって、ここまでなめられたら桜花だって、ほんと、怒ってやるんですからね!
それで、桜花が「軍令部に問い合わせて、きちんと状況の説明をしてもらいます!」って言ったら、なぜか木島さんが「その必要は無い」って言うんです。
なんでですか!木島さんまで桜花をはぐらかすつもりなんですか!
そしたら木島さんが
「・・・もう我々は軍令部の隷下ではないのだ」
って、言ったんです。
・・・え?
・・・もう、この状況で・・・たちの悪い冗談はやめてもらいたいです。
でも、なんだか皆さんの表情を見てると・・・どうも冗談ではないみたいなんです・・・。
軍令部の隷下ではないっていうのは・・・どういうことなんですか?!
すると野田さんが、
「我々第1艦隊、及び第4機動艦隊は、軍令部の隷下を離れ、独断で行動している。現在他の艦隊にも賛同を呼びかけている」
って・・・何を言ってるのか・・・桜花はなんだかさっぱり訳が分からないのですが・・・
その後木島さんが「会わせたい人がいるので司令中枢に来てほしい」と言うので、桜花はなんだか訳が分からないまま司令中枢に行く事にします。
それで司令中枢に着いたんですが、べつにいつもと変わらない人たち・・・かと思ったら、知らない人が一人います。
その人は、木島さんとだいたい同じ歳ぐらいの初老の男性で、海軍第二種軍装を着ています。
という事は海軍関係者だと思うのですが階級章は・・・ついてないです。
この人は一体・・・
・・・と思ったら、なんだかこの人、見覚えがあります。
・・・誰でしたっけ・・・
その人は、私を見るとにっこり笑って
「おお、ずいぶん雰囲気が変わったなあ。前会った時は・・・まだあどけない少女だったのになあ。いろいろ苦労したのだなあ」
って言うんです。
・・・そう言われても・・・桜花はこの人が誰だったのかまだ思い出せないんです。
するとその人は、桜花の帽子を見て、
「おお、この帽子もまだ使っているのかあ」
って・・・あ!この人、思い出しました!
桜花が始めて戦艦飛鳥に来た時に、一緒に装備引渡しをやった、前任の司令長官ではないですか!
あの時の桜花はまだ脳の機能があんまり良くなくって、記憶が曖昧で帽子をもらった事すら忘れてしまっているのですが、確かにあの人です。
桜花はあわてて敬礼をします。
そしてその人も敬礼するのですが、その後「前司令長官の山本だ。覚えていてくれたのだな」って言って、ちょっとうれしそうに笑います。
これはびっくりです。
それにしても・・・なんで前司令長官がここにいるのでしょうか。
するとその山本前長官は桜花が少し不思議顔をしてるのに気付いたらしく、
「私がなぜここにいるのか不思議に思っているだろう」
って言ってまた笑います。
でもその後少し真剣な顔になって、
「今君はいろんなことがあって混乱しているだろうが、これから話す事を聞いたらもっと混乱するかもしれない。落ち着いて聞いてくれるね?」
と言って、現在の状況を説明してくれたのですが・・・これが驚きの事実ばかりで、本当に混乱してしまいそうなんです。
8月14日の夕方、つまり桜花がたらばがにを食べて眠っちゃった後、そのまま桜花とうめはなと橘花さんは、戦艦飛鳥から軍令部の人に連れ出されてしまったのだそうです。
(たぶんその後桜花はあの赤いカーテンの部屋に連れて行かれたのでしょう)
その後軍令部から総員下艦命令が出たのだそうですが、なんと第1艦隊はこれに従わず、中にいた警備の人たちを外に出して、勝手に呉を出港したのだそうです。
その後、陸軍の特殊部隊を使ってあの赤いカーテンの部屋から桜花を救出して、その後桜花は移動仮死状態にされて極秘裏にこの第1艦隊まで運ばれたんだそうです。・・・って、なんで海軍の前司令長官が陸軍の特殊部隊を使う事が出来るんですか。
ていうか、軍令部の指示に従わずに出港って、これは反乱行為じゃないですか!
すごくびっくりですが、落ち着いて聞くように言われたので、とりあえず落ち着いて聞きます。
なんと驚きなのですが、この反乱行為は桜花が連合艦隊提督になる以前から、この山本前司令長官を中心に計画されていた事なのだそうです。
という事はつまり、桜花の知らない所でずっとその計画は進行していたと言う事なんですか?!
すると木島さんが本当に申し訳なさそうに「ごめんな、本っ当にごめん!」って桜花に謝るんですけど、そんな、謝られたって・・・ずっと木島さんは何か隠してるような気がしていたんですが・・・なんだか、もう・・・今は頭が混乱してよくわかんないです!
それでこの反乱計画というのは、海軍第1艦隊のみでなく、その他の艦隊司令部や、陸軍に至るまでの幅広い範囲で協力組織がいて、かなり大規模な計画なのだそうです。
しかしなんでそんな大それた事を・・・
そりゃあ桜花も軍令部のやってる事には、たまに・・・はらを立てたりしましたが、御国を護る皇軍を動かして反乱を起こすなんて・・・滅茶苦茶じゃないですか。
すると山本前長官は
「彼らは、自分らの行為がこの帝国を滅ぼす方向に向かうという事を分かっていないのだ。いや、分かったとしても、彼らはもう引き返せない所まで来ている。」
って言うのです。
帝国を滅ぼすって・・・一体どういうことなんでしょうか。
話はずいぶんさかのぼるのですが、もともとこの計画の始まりは、艦隊司令電算機の開発が発端なのだそうです。
そもそも、艦隊司令電算機の根幹となる構造の研究は、第二次大戦中のドイツで始まったのだそうです。
そんな昔からあったなんて驚きですが、それよりも艦隊司令電算機の起源がドイツだったなんて・・・・びっくりです。
ドイツは大戦当時から、誘導で敵に命中する「ミサイル」や「誘導爆弾」の開発を行っていたのだそうですが、これの全自動化を行う為の装置の開発として、人間の生体頭脳の研究が行われていたそうなんです。
(ふと思ったのですが、それって・・・人体実験をしていたってことなんでしょうか)
ただ、当時の技術では当然それの実用化はぜんぜん無理だったのですが、その際に培われた膨大な量の生体頭脳情報は、かなり価値の高い物だったらしく、その後も、連合国に察知される事無く極秘裏にその研究は続けられたそうなんです。
しかし敗戦国であるドイツで極秘裏にそれを続けるのは大変で、それなりの支援が必要だった訳なんですね。
そこで、その後どういう経緯でそうなったのかは知りませんが、なんとその研究の支援を、かつての同盟国である日本帝国海軍が、密かに行う事になったのだそうです。
帝国海軍とドイツの裏のつながりって、こんな昔からあったんですね。
それでその研究の支援を行う見返りとして帝国海軍はその技術提供を受けて、現在の艦隊司令電算機の開発が行われ、その後は知っての通り、この電算機が類稀な高性能を示し、五九式艦隊司令電算機としてあっと言う間に全艦隊に配備されたわけです。
しかし、その後しばらくすると、この司令電算機に一部問題があることが発覚します。
で、これが五九式司令電算機共通の欠点として知られている「作戦行動が周期的になってしまう」というやつで。
それで、これを改善する為に我々人型電算機が作られたわけなんですが。
ええ。これは桜花も知ってます。
この辺までの話だと、特に問題も無いような気がしますが・・・
しかし、この五九式司令電算機の欠点になにやら疑問を持った研究者がいたそうです。
なんとこの研究者というのが、あの、うめはなの主任整備士をやっていたおばさん、つまり梅花の事を最初に「うめはな」って呼んでいた人なんだそうなんですが、実はこの人、桜花が海軍に引き渡される前に桜花の主任整備士もやっていたんだそうです。
桜花は引渡し前の記憶が無いので、この人の事は全く知らないのですが・・・そうそう、この人、桜花のことは「さくらちゃん」って呼んでいたんだそうです。
でも確か・・・この人って、病気で亡くなられたって聞いたんですが・・・
もともと子供がいなかったこのおばさんは、桜花やうめはなの事を本当にかわいがって下さったそうで・・・そういう事を聞くと、なんだか切なくなってしまいます。
・・・ちょっと話がそれてしまいましたが・・・
それで、このおばさんの抱いた疑問というのが、なんと、このドイツから提供された司令電算機技術の欠点は、「意図的にプログラムされた物なのではないか」という事なのです。
・・・これは、ちょっとびっくり発言です。
つまり五九式司令電算機の作戦行動が周期的になるという欠点は「意図的に制限された物」だというのでしょうか。
それでそのおばさんは、海軍の方に「この電算機の配備は少し待った方が良い」と進言したそうなんですが、当時の帝国海軍は米国軍に実質戦力で劣っているという焦りもあって(あと、電算機の生産を担当する重工側から軍令部役員に資金提供があったとかいう噂もあって)、このおばさんの話は全く聞き入れられなかったそうです。
その後、その五九式司令電算機の欠点を補う為に、人型電算機の開発が始まったそうなんですが、これもまた、ドイツの技術提供の基で行われたそうです。
しかしこの段階で、このおばさんから「電算機技術には意図的な制限があるかもしれない」という話を聞いていた山本前長官は、なんと、海軍軍令部には極秘で「別組織」を作って、そこでそのおばさんに独自で司令電算機の生体頭脳の研究をさせたのだそうです。
なんだかだんだん話が複雑になってきたのですが、この「別組織」というのは今でも活動していて、現在では陸軍開発部とも裏で繋がっている結構大きな組織なのだそうです。
そうそう実は、以前シノさんから渡された、上層部に気付かれずに陸軍電算機と接続して会話したり出来る「例の部品」も実はこの組織が作ったものなんだそうです。
それで、この「別組織」内で密かに生体頭脳の研究を始めたこのおばさんなんですが、なんと、その3年後には、当時海軍がドイツと協力して開発していた試作人型電算機(後の六四式電算機、つまり私達の事なんですけど)に搭載する予定の生体頭脳とほぼ同等の性能を持つ生体頭脳を、完全に日本独自の技術のみで1個作ってしまったのだそうです。
・・・ひょっとしてこのおばさん、天才なんじゃないですか。
その後、海軍の人型電算機は完成して、それが皇紀2663年の橘の季節だったので「六三式司令電算機‐橘花」として制式化されたんだそうです。
・・・って、あれ?
人型電算機の制式化は皇紀2664年の桜の季節で、桜花じゃないんですか?
っていうか、それはつまり、桜花より橘花さんの方が先に制式化されていたという事なんですか?
それで、その制式化された橘花さんなんですが、その後間も無く、深刻な機能障害が発生し、それが原因で死者がでるほどの事故を起こしてしまったそうです。
それで結局、六三式人型電算機の制式化は取り消しとなって、その事故の事も極秘扱いになったそうなんですが、その際、橘花さんと、もう1機製作中だった人型電算機(たぶんこれが桜花の事なんでしょうか)を再度綿密に点検を行う為、一度、搭載している生体頭脳を取り外したのだそうです。
それでここからがまた驚きなんですが、その時のドサクサにまぎれて、その人型電算機の1機に搭載している生体頭脳を、なんと、そのおばさんが「別組織」で1個だけ作った日本独自技術の生体頭脳と取り替えてしまったのだそうです。
・・・ていうか、それってまさか、桜花の事なんですか?!
これはとても驚くべき事実なのですが、その時はもうほんとに他にもいろいろと驚くべき事実がいっぱいだったので、意外と驚かなかったんです。
すると山本前長官が
「もっと驚くかと思っていたが、桜花大将は冷静だな。感心だ」
って、言って褒めてくれたんですが、実際は、もう桜花は混乱状態で驚く事も出来なかったんですね。
でもこれって・・・大変な事ですよね!
だって、桜花の頭の中に入ってる物なんですよ!
あ、でも、日本独自技術の生体頭脳っていうのは、ちょっとうれしい様な気もしますが。
そういえば・・・橘花さんと桜花って、同型機であるはずなのに、ぜんぜん雰囲気が違いますよね。
それはつまり、そもそも搭載している生体頭脳が違うからだったのでしょうか。
・・・それって・・・大丈夫なんでしょうか・・・
だんだん心配になってきました。
・・・でもまたなんでそんな事を・・・
・・・それで、また話を戻しますが・・・
その後、六四式人型司令電算機として桜花が艦隊に配備される事になります。
本来ならば山本長官が艦隊の指揮を執り、そのサポートを桜花がするという形が好ましい筈だったのですが、なぜか軍令部の意向で山本長官は解任となり、桜花が艦隊の指揮を執ることになります。
これは、その時すでに、軍令部に対して反抗的だった連合艦隊参謀部を制御しやすくする為だったらしいのですが、実は、山本前長官にとっては艦隊任務を解かれた方が「別組織」の仕事に専念できるから好都合だったそうです。
それで、「別組織」による司令電算機の研究は続けられたそうなんですが、その後の研究で、ドイツの技術提供により作られた司令電算機には、なんと、意思共有化というものが成されているという事が分かったそうです。
で、これはどういうものかというと、司令電算機の生体頭脳内の意志伝達神経が、ある特殊な信号を受けると、自分以外のある特定の司令電算機の意識を優先して頭脳内に伝達して行動してしまうという物で、つまり、現在艦隊に配備されている司令電算機は、ある信号を受信すると、外部からの司令は全く受け付けなくなり、ある「特定の司令電算機」からの司令に従ってしまうのだそうです。
で、その「特定の司令電算機」というのが、どうやらドイツの司令電算機らしいとうことで・・・
・・・・え!!
ということはつまり、日本の司令電算機は、ドイツの思い通りに動かせてしまうって事なんじゃないですか?!
すると山本前長官は
「断言は出来ないが、今までの状況から判断すると、ほぼ確実にそういうことになる」
ということだそうです。
・・・これは・・・大変な事じゃないですか!
これは早いところ艦隊の司令電算機から、その「意思共有化」機能を取り外さないといけないんじゃないですか?!
しかしこれがそう簡単に行くものではなくて、司令電算機にはその根幹部分に生体頭脳が使われていて、これを電子頭脳と融合させる事により完成するのですが、電子頭脳の方はいくらでも入力変更が出来るのですが、その生体頭脳の方は一度完成してしまうと、もう入力変更は出来なくて、で、その「意思共有化」機能というのはこの生体頭脳の方にあるのだそうです。
つまり、この「意思共有化」機能を無くすためには、司令電算機そのものを取り外さなければならないのだそうです。
しかしこの司令電算機全面配備にはもう多額の予算が掛かっているし、また、現在の連合艦隊は、この司令電算機を中核としておよそ全てのシステムが成り立っているので、これを取り外すという事は、連合艦隊全ての指揮通信装置を作り直さなければならず、もちろんそれにはまた多額の予算が掛かるのですが、何よりもそんな事をすると、艦隊の戦闘能力はおよそ20年分も後退してしまうのだそうです。
現状でも米軍と対等に渡り合うのはかなり厳しい状態だというのに、そんなことしたら、日本はまた、第二次大戦直後の劣等国家になってしまうじゃないですか。
・・・これは・・・大変です。
つまり我々は、司令電算機を装備したままドイツの隷下になるか、司令電算機を取り外して米国の支配下になるかの選択しかないということなんですか?!
すると山本前長官は、ちょっと冗談ぽく
「ドイツとアメリカ、どっちがいい?」
って桜花に聞くんですけど、そんな、何を言うんですかいきなり。
「そんなのどっちもいやに決まってるじゃないですか!」
って桜花がいうと、山本前長官は
「君がそう言ってくれて安心したよ。なにせ君が我々の最後の希望なのだからな」
・・・え、桜花が最後の希望なのですか?
・・・それはまた・・・どうして・・・
あ!
桜花の生体頭脳は、「別組織」が日本独自技術で作った生体頭脳と取り替えてあるんでしたっけ。
じゃあ、つまり桜花だけはその、「意思共有化」機能が付いていないんですね。
・・・なるほど。ちょっと安心しました。
いや、ちょっと待ってくださいよ。
その「意思共有化」機能が付いてない桜花を、わざわざ陸軍特殊部隊を使って極秘裏にこの反乱行動中の第1艦隊に連れ戻したということは・・・
それはまさか・・・ドイツの思い通りにならない桜花が、この反乱行動に参加して、艦隊の司令を行えっていう事じゃないでしょうね?!
すると山本前長官は、
「強要する気は無い。しかし君の協力が無ければ、我々の敗北は明らかだな・・・」
って、言うんです。
・・・そんな、いきなり・・・訳がわかんないですよ!
だいたい人の脳みそを勝手に取り替えといて、それでいきなり反乱行動の指揮を執れなんて!
勝手すぎるじゃないですか!
そもそも桜花は御国を護る為に作られたんですよ。
それが反乱軍の指揮を執るなんて、とても有り得ない事です。
すると野田さんが
「ではこのまま我々は、ドイツの隷下になれと言うのか!」
っていうんです。
それは・・・確かに・・・桜花も嫌ですけど・・・
でも、わざわざ艦隊を使って反乱を起こさなくても、他に方法があるんじゃないですか?
ほら、桜花はその「意思共有化」機能が付いてないんですから、その事を軍令部に話して協力してドイツの電算機を追っ払っちゃえば良いんじゃないんですか。
すると山本前長官は
「そんな事をしたら、間違いなく君は消されるだろう。今まで君が処分されずにいられたのは、君の生体頭脳が換装されている事を彼らの目からうまく偽装してきたからだ・・・それに、軍令部も、さらにそれより大きな組織に操られてるに過ぎない。彼らにとって、意思共有化されない君は・・・取引の邪魔でしかない」
って言うんです。
なんだか、また訳が分からなくなってきましたが・・・
その後の山本前長官の話がまた、驚愕なんです。
「われわれ帝国海軍は、政府間の取引材料に使われたのだ」
・・・取引材料って・・・
それは・・・一体どういうことなのでしょうか。
「つまりだな・・・日本政府は、ドイツという欧米連合国家を大東亜連合に引き入れ、その上、司令電算機の技術を提供させるその見返りに、連合艦隊を一部彼らと共有させるという裏取引をしたのだ」
・・・まさかそんな!ありえないです!
「だってドイツは、ほら、過去の歴史とかでいろいろあって欧米連合には反感を持っていて、それで右翼系政権ができて、それで日本と同盟を結びたいって言ってきたんじゃないんですか?!」
って桜花が言うと、横から木島さんが、
「歴史問題なんていうのは国民感情を高める為の宣伝物みたいなもんだからねえ。そういうのも含めて取引だから・・・」
なんだか訳が分からないです。
御国を護るための連合艦隊を、ドイツと同盟を結ぶ為の取引材料にするなんて、
どう考えても滅茶苦茶じゃないですか!
だいたいドイツとの同盟って、連合艦隊を共有させてまで国家に必要な事なんですか!
すると山本前長官は
「司令電算機を中核とした艦隊システムの構築には、多額の金が動いている。ドイツと同盟を結べば、大東亜連合がそれを独占する事が出来る。・・・そもそも、日米冷戦状態も多額の金を軍需産業に流す為の営業活動でしかない。・・・この世界は、巨大な軍需産業によって支配されている。ドイツがこちら側につけば、日米間の緊張は高まり、再び多くの金が軍需産業に流れるようになる。もう既に、軍隊は国家を守る為にあるのではない・・・そして、この国の政府は・・・軍需産業の利益の為に、それを他国に売り渡そうとしている。・・・その国の深意すら知らずに・・・いや、分かっていたとしても、もう後戻りは出来ないほどに司令電算機は強力になってしまった」
・・・この人は・・・いったい何を・・・
・・・あ、でも・・・
そう言われてみれば・・・今までの作戦でも、米国と戦争になりそうになった事は度々ありましたが、その度にまるで予定行事のように撤収命令が出て・・・・
・・・つまりこれって・・・全て軍需産業を儲けさせるための営業活動だったのですか?!
・・・それじゃあ・・・私たちって、いったい・・・
「そんなの許されるわけありません!」
って、桜花が言うと、山本前長官は、
「・・・我々の反乱行動の意義が・・・なんとなく分かってくれたかな?」
って、言うんですけど・・・
それは・・・なんとなく分かりましたが・・・
でもその・・・反乱軍の指揮を桜花が執るなんて・・・
・・・とても・・・
どうしたら良いのでしょう・・・
こんな重要な事、桜花一人では決められません。
でもこの状況で木島さんに相談しても意味ないし・・・
こんな時こそ橘花さんに・・・・あ!
橘花さんはどこにいるのでしょうか。
それと、うめはなも、ここにはいないみたいなんですが。
橘花さんとうめはなはどこにいるんですか?!
すると木島さんが暗い表情で、とても言い辛そうに、
「・・・橘花は・・・一応、我々の方にいる・・・でも、うめはなは・・・軍令部に連れてかれたままだ」
・・・って、・・・そんな・・・
うめはなが軍令部につれてかれたままだなんて・・・
なんでですか?!
どうしてうめはなは助け出してくれなかったんですか?!
すると山本前長官が、
「危険を冒して連れ出すより、軍令部に預けておいた方が安全だと判断したのだ。それに・・・彼女にも、意思共有化機能が付いている可能性が高い」
・・・そんなのって!あんまりです。
「つまりこの反乱軍には、うめはなは必要無かったという事ですか!」
って桜花が言うと、木島さんがとても申し訳なさそうな顔で、
「いや、本当に・・・桜花を連れ出すのだって、かなり危なかったんだぞ。もし失敗したら、うめはなは殺されちゃうかも知れないんだぞ。俺たちだってうめはなの事は心配なんだよ。でも今は軍令部にいたほうが安全なんだよ」
・・・確かに・・・桜花が陸軍の人たちに連れ出された時も、かなり危ない感じでしたが・・・
でも、それじゃあ・・・
「軍令部がうめはなを反乱鎮圧軍の司令機にしたら・・・桜花はうめはなと戦う事になるんですか?」
って桜花が言うと、回りが一瞬静かになります。
しばらくの沈黙の後、山本前長官が、
「軍令部も、司令電算機を搭載した艦隊同士が戦闘を行うとどのようになるかは分かっているはずだ。我々も、日本の艦隊と戦うような事はしたくない。お互いが戦闘をすることに何の利益も無いのだから、戦闘にはならないだろう」
・・・戦闘にはならないだろうって・・・
そういうふうに言ってて、結局お互い引っ込みが付かなくて大戦闘になってしまった例が今までの歴史にも結構あったんじゃないですか。
すると山本前長官は、
「我々の目的は、あくまで有利な条件で彼らと話し合う事なんだ。」
・・・って、言ってますけど・・・そんなのわかんないですよ。
とにかく、橘花さんがここにいるのなら、会って話がしたいです。
今後どうするかは橘花さんと相談して決めます。
それで桜花は、
「橘花さんと会わせてください」
って言ったんですけども・・・なんだか、また回りが静かになります。
・・・なんですか、またなにか桜花に隠してるんですか。
すると木島さんが、
「・・・今は・・・まだ彼女には会わない方がいい」
って言うんです。
またそんな事を・・・もう桜花もちょっとはらが立ってきて
「会わない方が良いかどうかは桜花が決める事です!今すぐ会わせてください!」
って怒鳴ってやりました。
すると皆さん一瞬びくっとした感じになったのですが、その後木島さんが、
「・・・わかったよ、今橘花がいるところに案内するから、怒らないでくれ」
って、ちょっと泣きそうな感じで桜花を案内します。
なんだか大声出して悪かったような気もしますが・・・
それで木島さんや参謀部の方々と一緒にぞろぞろと歩いて行くのですが、そのうちなぜか外に出ます。
外はどんより曇っていて、小雨が降っていて・・・
なんだか今の不安な気持ちをそのまま風景にしたみたいです。
それにしても・・・橘花さんは一体どこにいるのでしょう。
すると木島さんは、飛鳥の後部飛行甲板まで来て、艦隊の後ろの方にいる船を指差します。
どうやらあの船に橘花さんがいるそうですが・・・あ、
あの船は・・・試験開発艦ではないですか。
あの船も反乱軍に参加しているのですか。
それで桜花たちは旋翼機に乗って試験開発艦に移るのですが、近付いていくと、なんだか試験開発艦の艦首あたりに何やらぽつぽつと穴が開いてます。
なんだか機銃弾で撃たれた跡みたいですが・・・
そして旋翼機は試験開発艦の飛行甲板に降着し、桜花たちは艦の中に入って行きます。
なんだかこの船に、木島さんや参謀部の方々がいると、ちょっと不自然な感じもしますが・・・
船の中は妙に静かで、人もあんまりいません。
その静かな船内の廊下を、桜花たちが歩く靴の音だけがこつこつと響きます。
そしてしばらく行くと、頑丈そうな鋼鉄の扉の前に着きます。
この船にこんな場所があるなんて知りませんでしたが、どうやら橘花さんはこの中にいるみたいです。
その時木島さんは、その扉を開ける前に一言桜花に
「・・・彼女を見ても、あんまり驚かないでやってくれ・・・」
って言うんです。
何を言ってるんですか。
橘花さんを見て驚くわけないじゃないですか。
「もったいぶらないで、早く橘花さんに会わせてください」
って桜花が言うと、木島さんは少し、つらいような悲しいような表情をして、その扉を開きます。
その扉は「ごおん」という低い音を出してゆっくり開きます。
そして桜花はその部屋の中に入ったんですが・・・中は暗くて、なんだか空気がひんやりと冷たいです。
ちょっと奥に入っていくと、近くの壁に橘花さんの黒い第一種軍装が掛かってます。
それと、桜花があげた薄紫色のリボンも一緒に掛かってます。
でもどっちもぼろぼろです。
これは・・・一体どうしたことでしょう。
なんだかその服を見ると、急に桜花は不安になってきて、「橘花さん」って呼んでみたんですが、返事はありません。
しばらくすると、だんだん闇に目が慣れてきて、部屋の中が見えるようになります。
部屋の奥には、青い水が入った大きな水槽があります。
水槽というより、ガラスの壁で仕切られたもうひとつの部屋みたいな感じです。
その青い水の中には、数えきれないほどたくさんの細いコードが毛細血管のようになっていて、それがあるひとつの物に向かって収束しているのですが・・・
・・・これは・・・一体なんなのでしょう・・・
なんだか、手足の無い生き物のようにも見えるのですが、包帯みたいなものでぐるぐる巻きになっていてよく分かりません。
そして、その包帯の隙間から、細いコードがたくさん出ています。
ちょっと、これ・・・気持ち悪いです。
なんなんですかこれは。
それよりも桜花は早く橘花さんに会いたいんですが。
この部屋には橘花さんなんていないじゃないですか!
橘花さんはどこにいるんですか!
すると木島さんは、
「・・・それが・・・橘花だ。」
って・・・・
・・・・・・・え?
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・・・・私は・・・いったい・・・どうしてしまったのでしょう。
気が付いたら、どこかのベッドの上で寝かされています。
・・・ここは・・・医務室です・・・たぶん。
なんだか頭がぼーっとします。
となりには木島さんがいます。
なんか、鼻にでっかいガーゼが貼ってあります。
・・・どうしたんですか?
すると木島さんが
「鎮静剤をうったから・・・少し落ち着いたか?」
と言います。
鎮静剤って・・・・私にですか?
・・・頭がぼーっとするのは、もしかしてそのためなんですか・・・
それにしても鎮静剤って・・・なんで・・・?
・・・・なんだか、記憶が曖昧で・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・ああ、
・・・そう・・・
私は木島さんから・・・あの話を聞いて・・・それで、少しおかしくなってしまったんです。
それでその後・・・私は・・・・
「・・・木島さん・・・ごめんなさい・・・鼻、大丈夫ですか?」
桜花がそう言うと木島さんはケタケタと笑いながら、
「いや〜きいたよ。あの後鼻血がどばどば出てさ〜。いや〜桜花ちゃんに殺されるかと思ったよ〜」
ああ、私は・・・・なんて事を・・・・
「・・・ごめんなさい・・・」
すると木島さんは、優しくにっこり笑って、桜花の頭をなでなでしてくれます。
「俺もなぁ、最初にあの話を聞いたときは、おかしくなりそうだったよ。・・・でも、あれは仕方がなかったんだ。あの時俺たちは、第0艦隊に橘花が乗ってるなんて知らなかったし・・・何よりああしなかったら、俺たちが死んでたかもしれないんだぜ」
・・・そうですね・・・それは・・・確かに・・・
・・・でも・・・
ああ・・・・私は何て事を・・・
・・・ああ、わたしは・・・・
・・・・・
・・・でも、今は・・・鎮静剤のせいかどうかは分かりませんが、
その事を幾分冷静に受け止める事が出来ます。
・・・いや、受け止めてるというよりは・・・・
なんだか、頭があまり回ってない様な感じです。
・・・なんだか・・・どんよりと・・・・
・・・・・
・・・・・
「・・・橘花さんは・・・元通りになるでしょうか・・・」
「ああ。・・・きっと・・・元通りになるよ」
木島さんのその言葉は・・・たんなる気休めなのかもしれませんが・・・でも、桜花は、
今はそれを信じるしかありません。
橘花さん・・・元気になってほしいです。
・・・・・
・・・・・
「・・・木島さん・・・桜花はこれからどうしたらいいでしょうか・・・」
しばらくの沈黙の後、桜花がそう言うと、木島さんは少しだけ真面目になって
「・・・そうだなあ・・・それは・・・・桜花が自分で決めるしかない・・・・でも、お前がどっちに決めたとしても、みんな桜花を恨んだりはしないよ。俺たちも、艦隊のみんなも、本当に、桜花を・・・・愛してるんだ」
・・・・・
しばらく桜花が静かにしてると、木島さんは突然ケタケタ笑いだして、
「おいっ、静かになるなよっ、なんだか照れるじゃねえかっ」
「・・・はい?」
「ああ、この女は。男をその気にさせといて、それにぜんぜん気付かないタイプだよ。罪だね〜全く」
って言って、木島さんはまたケタケタ笑います。
・・・なんだか木島さん、すごくテンション高いです。
・・・でも、今の私には・・・・
・・・・・
その後木島さんは、
「どうだ、飯でも食ったら元気になるんじゃないか?なんならここに持って来させるか?」
って言うんですかど・・・桜花はぜんぜん食欲がないし・・・
それに、やっぱり・・・
今は元気になれません。
だから、
「・・・すこし・・・一人で考えさせてください・・・」
桜花がそう言うと、木島さんはちょっとだけ寂しいような顔になってから、またちょっとだけ笑って、
「・・・そうか。わかった・・・でも、あんまり考えすぎるなよ」
って言って、部屋のドアを開けます。
その後また振り返って、
「大丈夫か?」
って桜花に聞いたので、桜花も少し大丈夫そうな顔で、
「大丈夫です」
って言います。
そしたら木島さんは、またニコっと笑って部屋から出て行きました。
そして・・・桜花はこの医務室で一人になりました。
やっぱりこれは、自分一人でしっかり考えて決めなければなりません。
・・・でも・・・
・・・・・
・・・・・
あんなふうになってしまった橘花さんと・・・・
ここにはいないうめはなの事ばかり、考えてしまって・・・
それは、悲しみでもなく、怒りでもなく・・・
それよりも深くて暗い・・・不安感です。
・・・どうしようもない不安感ばかりが・・・どんよりとしてるのです。
どんよりと重くて・・・
・・・桜花は何も、考える事が出来ないんです・・・・
・・・・・
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