皇紀2665年 11月1日


桜花

 第1艦隊は台湾西岸沖で洋上待機です。
桜花は特にする事がないので、うめはなと一緒に甲板でぼーっと海を見てたりしてます。
それにしても、この辺の海はきれいですね。
なんだか魚が釣れそうです。
それで野田さんから釣り道具を借りてまた釣りでもしようかと思ったら、うめはなが「かぶとがにがくるよ!」っと言って止めるのです。
野田さんの話では、あんなものが釣れる事は滅多にないという事なので大丈夫だと思うんですが、うめはなはすごくおびえているのでやめておきました。
それで今日は一日中、海をぼーっと見ています。
なんだか暇です。






橘花

 第1艦隊は台湾西岸沖で洋上待機。
特にすることが無いので飛鳥庵で今日も茶を飲む。
店主がなにやら陸軍の悪口を言っている。
やはり昔から海陸軍の仲は悪いらしい。








皇紀2665年 11月2日


桜花

 本日、ついに陸軍機が来ました。
でも陸軍の大型旋翼機は飛鳥にそのまま着艦できないみたいで、一度空母に着艦してから、海軍の旋翼機に乗り換えて飛鳥に来ました。
今回来たのは、陸軍中佐の方が一人と、あとその御付の人々と、それと整備の人数名で、本隊は明日到着なのだそうです。
陸軍の人ってすごく嫌な人かと思っていましたが、桜花に会うときちっと敬礼して、会合に遅れた事を謝っていました。
ただ、なんで遅れたのかとか、そういう説明は一切無しです。
その後、今回の会合の目的である兵器の新機能試験について説明してくださいましたが、これもなにやら軍の機密とかで具体的な事はよく分かりません。
それで、どうも話によると飛鳥の司令中枢を借りたいのだそうで、案内してほしいとの事です。
なんだかこれには野田さんも「そのような曖昧な説明で、海軍の司令中枢を明け渡す事が出来る筈無かろう!」と怒ってしまいましたが、軍令部からも陸軍に協力するよう言われているので、とりあえず、司令中枢への入室を許可することにしました。
参謀の方々も嫌な顔をしていましたが、これは仕方が無いです。
その後、陸軍の人を司令中枢まで案内したのですが、何をするのかと思って見ていたら、なんと桜花の座る司令席の、しかも電算機挿入プラグを取り出したりしたので、桜花もこれにはどきっとして「なにをやってるんですかっ!」と、大声を出してしまいました。
陸軍中佐の人もちょっとびっくりしたみたいで、その後すごく謝っていたのですが、やっぱり、その、そういうのを他人に見られるのはあんまり良い気分ではありません。
でも、まあすごく謝っているのでちょっと見るくらいならいいかと思ったのですが、その時突然、橘花さんが陸軍の人たちの前に出てきて


って言ったんです。
橘花さん・・・なんだかすごくこわいです。
ちょっと回りの空気が変わったような感じがするくらいこわいです。
これには陸軍の人々も恐れをなしたのか、その後は何もしないで帰ってしまいました。
それにしても橘花さんって、怒ったらすごくこわいんですね。
びっくりです。






橘花

 本日、艦隊に陸軍機が到着。
部隊の主任である陸軍中佐は意外と低姿勢だが、なにやら今回の兵器試験では飛鳥の司令中枢を使用するのだと言う。
丁寧な口調とは裏腹に、なんとも大胆である。
参謀達もこれには嫌悪感を表していたが、桜花提督はにっこり笑って軽く許可してしまう。
その後陸軍の整備士が司令中枢の機器を色々と見ていたが、そのうちに桜花提督の司令席にまで手を付け始める。
これは許される事ではない。
特に桜花提督の身に直接触れる接続プラグを素性も分からぬ他人にいじられるなんて。
許せない。








皇紀2665年 11月3日


桜花

 今日は艦隊に陸軍の本隊が到着し、本格試験開始という事で・・・ちょっと憂鬱です。
今回来たのは、人数は昨日よりちょっと多いくらいなのですが主任の方は陸軍少将で、前よりえらいです。
あと、今回はでっかい給湯器みたいな機械もあります。
たぶん試験に使う物だと思いますが、これタイヤがついていて自動で走るんです。
ちょっとおもしろいです。
それで、陸軍少将さんは試験を開始する前に試験内容についてもう一度きちんと説明したいと言う事で、応接室でお話を聞く事になりました。
それにしても、この少将さんはすごく体が大きくて顔には縫った跡とかがあって、すごく怖いです。
でも、それにも増して怖いのは橘花さんです。
なんだか目つきがいつもと違うんです。
それに、いつも付けてないのに、今日は軍刀を腰に付けてるんです。
すごくこわいです。
木島さんも小さな声で「怖いな」と、ぼそっと私に言ってました。
応接室に行くまでの間その陸軍少将さんと橘花さんの無言の戦いみたいな感じになっていて、もうすごくこわくて、桜花はどう話を切り出したら良いか困ってしまいました。
その時突然、女の人の声で「昨日はうちのものが無礼を働いたようで、申し訳ありませんでした」って、誰かが言ったんです。
でもこの中には女の人は桜花と橘花さんしかいないのでどこから声がしたのかきょろきょろと探していたのですが、すると、一緒に付いてきた給湯器みたいな機械からにょっきり手がはえて「ここでーす」って言ったんです。
声の主はこの給湯器だったんですね。
ちょっとびっくりです。


その後、この給湯器みたいな機械がお話をしだしたのですが、なんだか見た目がこっけいなので(なんて言ったら失礼なのですが)ちょっとおもしろいんです。
お話によると、この給湯器さんの名前は「シノ」さんといって、本当は給湯器ではなくて、陸軍の司令電算機なのだそうです。
これはびっくりです。
しかもちゃんと陸軍中将という階級も持っているそうで、そう言われてみれば、確かにてっぺんに星が二つ書いてあります。
とにかくこの「シノ」さんはおもしろいので、笑いをこらえるのが大変だったのですが、そのおかげで場の空気はすっかり和んで良い感じになりました。
それで、今回の新機能試験の内容なんですが、簡単に言うと、陸軍の司令電算機でも海軍の司令電算機に接続できるのかどうか試してみたいと言うだけの事のようです。
もっと大それた事をやるのかと思っていたのでちょっと安心しました。
という事で早速接続してもらって、いろいろ機能試験をして、特に問題もなかったそうで、
めでたしめでたしです。
なんだかあんまり簡単に終わってしまったのでちょっと拍子抜けです。
それで、試験はもう終わったのですがシノさんは明日、もう一回飛鳥に来たいと言ってました。
シノさんなら何度来てくださっても良いと思います。
なんだかおもしろいので(なんて言ったら失礼なのですが)






橘花

 本日、陸軍本隊が来艦し、本格試験開始との事。
今回は昨日と違って将官も来ている様だが、どちらにせよ海軍旗艦の司令中枢でやるからには、それなりに筋を通してもらう必要がある。
とりあえず応接室で一から説明させる事にしたが、なにやら突然、不思議な円筒状の機械が出てきてその説明を始める。
話によるとこの円筒形の機械は、なんと陸軍の司令電算機だそうで、名前は「シノ」と言うそうである。
階級は一応陸軍中将と言う事だが、この「シノ」がまた、話し上手、と言うかおもしろい動きをする。
ひょっとしたら場を和ませようとしてるのかもしれないが、とりあえず今回の機能試験の内容は一から説明してくれたので、良しとしておく。
それで、その機能試験の内容と言うのもそれほど大掛かりな物ではなく、単純な接続試験のようで、案外すぐに終わってしまった。
やや拍子抜けた感があるが、なにやらこの電算機「シノ」は、明日も旗艦に来たいと言っている。
機能試験は終了したのだから、もうここに来る必要は無いと思うのだが、すっかり打ち解けてしまった桜花提督は、またも軽くこれを許可してしまう。
ちょっと、彼女の温和な性格にも程があると思う。








皇紀2665年 11月4日


桜花

 今日も飛鳥に「シノ」さんが来ました。
シノさんは「こちらの事情で艦隊の行動を制限してしまって申し訳ないです」と言ってましたが、呉に帰ってもどうせ洋上待機になると思うので特に問題は無いと思います。
それで、シノさんが今日飛鳥に来た理由と言うのは、なにやら桜花と橘花さんに重要なお話があるのだそうです。
しかも そのお話をする為に、陸軍参謀本部には手違いで機能試験が一日延期になったという事で報告してるのだそうです。
重要なお話をするというだけで、なんで虚偽報告をしなければならないのかは分かりませんが、まあ、陸軍にもいろいろと事情があるのでしょう。
それで、応接室でシノさんのお話を聞いたんですが、今日は昨日と違って、ちょっと真面目な感じです。
実は昨日のシノさんがあんなにおもしろい雰囲気だったのは、場の緊張感を和らげる為だったようで、本当は冗談とか言ったりするのはあまり得意ではないそうです。
シノさんって、ものすごく回りへの気配りが出来る人なんですね。
すごいです。
それでシノさんのお話なのですが、これがちょっと難しい話なのですが、分かりやすく言うと「海陸軍の電算機同士仲良くしましょう」という事みたいです。
(ほんとはもっと複雑な話なんですよ)
実際、以前共同で行った帝都対テロ訓練の時もそうでしたが、海陸軍の連携って最悪なんですよね。
その事はシノさんも痛感していた様なのですが、最近の世界情勢から考えると、やはり今こそ海陸軍の連携を密にしなければ、と言う事だそうです。
しかし両軍、上層部から一兵員に至るまでみんな仲が悪いので、今すぐにどうにかしようにも どうにかなるようなものでもありません。
そこで、戦時の際に軍の中枢となる両軍の司令電算機同士が連携して作動するようにしておけば、この仲が悪い海陸軍もうまく連携して作動することが出来るのではないかということです。
なるほど、これはもっともです。
しかし、ここからがちょっと問題なのですが、その後シノさんは、人型電算機の挿入プラグみたいな部品を私の前に差し出しました。

これはなんなのか聞いてみると、どうもこれは軍上層部には極秘裏に整備の人に作らせたものらしいのですが、これを飛鳥の司令電算機と直接続する時に、間に中継して差し込むと、両軍の上層部に感知される事無くシノさんと直接会話したり連携作動したり出来るようになるのだそうです。
・・・上層部に感知される事無く連携作動したりって・・・
つまりこれは、上層部の指揮下から逸脱した行為ではないですか。
と、桜花は思ったのですが、シノさんの話によると、上層部の指揮下では両軍の綿密なる連携など有り得ないのだそうです。
でも・・・司令電算機が勝手な事をするというのは、つまり、使ってる武器が言う事を聞かないのとおんなじで、それは、悪い事だと思うのですが・・・
最後にシノさんは
「これをどうするかはあなたの判断にお任せします。しかし、いずれ必要になる時が来ると思います」
と言って、帰って行きました。
その後、橘花さんにも相談してみたのですが、とりあえずこの事は二人だけの秘密にしておこうと言う事になりました。
それで、この部品は台湾のお土産袋に包んで、桜花の部屋の鍵のかかる引き出しに入れとく事にしたのですが・・・
こんなもの渡されても一体・・・桜花はどうしたら良いのでしょうか・・・
すごく困りますし、すごく不安です。





橘花

 昨日に引き続き、今日も電算機「シノ」が飛鳥にやってくる。
それで、今回はやや真剣な感じで、どうも我々海軍司令電算機に話があるのだそうである。
それで、応接室で私と桜花提督と、それと「シノ」と三人だけで会話する事になったのだが、話を聞いているうちに、この電算機「シノ」は軍用兵器としては必要以上に高性能である事に気付く。
彼女の話によると、現在の世界情勢から考えて早急に海陸軍が連携協調出来る状態にする必要があると言う事だが、現在の両軍上層部の状況から考えてそれを期待する事は出来ないということである。
その辺は私も理解できる。
しかし、そこからの話が、我々電算機の常識から外れている。
「シノ」は海陸軍電算機同士が独自で接続回線を持ち、連携作動すべきではないか、と言う。
独自で、と言うのはつまり、上層部の指示から逸脱して作動すると言うことである。
一体、この電算機は何を考えているのか・・・
それで「シノ」は桜花提督に、なにやら接続部品のような物を渡す。
我々が飛鳥の司令電算機と接続する際、これを中継して直接続すると、上層部に感知される事無く陸軍電算機と連携作動する事が可能なのだそうである。
また、この接続部品も上層部には秘密裏に作らせたということである。
どのような司令回線を使ってそのような事をしたのか分からないが、とにかくこの陸軍電算機は、陸軍の思惑を遥かに超えた高性能機であることだけは何となく分かる。
もしかすると、今回の機能試験というのも、「シノ」がこの戦艦飛鳥に来て、この部品を我々に渡すためにあらかじめ仕組んでおいた口実だったのかもしれない。
一通り話し終えた後、「シノ」は何事も無かったかのように帰って行ったが、その後私と桜花提督はこの部品をどうするかで問答しあう事となる。
結局、今回の事は二人だけの秘密ということで、この部品はしばらく密かに取っておく事にしたが、私は、あの陸軍電算機を全く信用できない。
とにかく言ってる事は理解できるが、どうも、裏に何かもうひとつ事情がある様な気がする。
「シノ」が帰った後、とりあえず陸軍が触れた司令中枢の記憶情報を綿密に点検してみるが、特に異常は見付からない。








皇紀2665年 11月5日


桜花

 第1艦隊は呉に戻ります。
それにしても、桜花は昨日「シノ」さんから頂いた部品の事が気になって仕方が無いのです。
暇になると、部品の入っている引き出しを見に行ってしまうのです。
なんだか自分でも怪しい動きをしてるなあって思うのですが・・・
桜花はやっぱり、秘密にしておくなんて無理ですよ。






橘花

 第1艦隊は再び呉に戻る。
桜花提督はなんだか一日中落ち着かない様子。
やはり、昨日の事が気になっているのだろうか。








皇紀2665年 11月6日


桜花

 今日も一日どうしようもなく不安です。
不安なので、艦橋の窓から静かに海を見ています。
じたばたしてるとかえって怪しいので。





橘花

 梅花が私に「このごろおうかへんだね」と言っていた。
心情の変化が幼女にまで知られてしまうとは。
やはり、桜花提督は隠し事など出来ない性格なのだろう。
これは何とかしなければ。








皇紀2665年 11月7日


桜花

 今日は飛鳥庵で静かにお茶を飲んでいたら、木島さんがやってきたのでしばらく一緒にお茶を飲んだりしていました。
桜花はなるべく普通にしていたつもりなんですが、木島さんって、やっぱりなんか変だなって思っているんでしょうかね。
でも、木島さんは特に何か聞いてきたりとかはせずに、ただ普通に台湾の話とかをしていました。
桜花はやっぱり木島さんだけにでもあの部品の事を話しておくべきだと思います。
それで今日橘花さんに相談してみました。
そしたら「提督がそうされたいなら別に構わないと思います」って言ってました。
なんだか案外軽いです。






橘花

 今日、桜花提督が私に相談があるということで彼女の部屋に行く。
話の内容はやはり例の部品の事で、彼女は木島中将にもこの事は話しておくべきではないかと言う。
ここで彼女に秘密を守るべきだと言ったら、たぶんもっと落ち着かなくなって場合によっては逆効果かもしれないので、とりあえず彼女の意見に賛成しておく。








皇紀2665年 11月8日


桜花

 本日、第1艦隊は呉に到着し即座全艦補給を行います。
それで今日は補給物資の確認作業に追われて、結局木島さんに部品の事を相談できませんでした。
ということで、明日。






橘花

 第1艦隊は呉に入港、全艦補給。
桜花提督は今日木島中将に相談するのかと思ったら、なんだか忙しくて出来なかったらしい。








皇紀2665年 11月9日


桜花

 ついに今日、あの部品のことを木島さんに相談してみました。
でも一人ではなんだか自信が無いので橘花さんも一緒に三人で桜花の部屋でお話しました。
それで、とにかく木島さんに例の部品を見せて今までの事の成り行きを全部話しました。
話終わったあと、木島さんはしばらく「ふーん」と言って考えていましたが、ちょっと笑って「そんなこったろうと思ったよ」と言いました。
やっぱり木島さんは、桜花が何か隠し事をしてるって事を分かっていたんですね。
それで桜花は「やはり軍令部に報告すべきでしょうか」って木島さんに聞いてみたんですが、木島さんはなんだかケタケタ笑って「桜花ちゃんは真面目だなあ」って言ったんです。
一瞬「え?」と思いましたが木島さんの話によると、いちいち軍令部の石頭に報告して指示を仰いでいたら軍隊を動かす事なんか出来ないんだそうです。
そういうものなのでしょうか。
でも、陸軍司令機の言う事をそのまま信じてこの部品を接続してしまうのはちょっと問題なのだそうで、とりあえずこの部品はどういうものなのか調べてみた方が良いんだそうです。
確かに、桜花もそう思います。
それで木島さんは「軍管轄外でこういうのに詳しい連中に調べさせるから、この部品、ちょっと俺に預けてみないか?」と言いました。
軍の管轄外で人型電算機の関連部品に詳しい人たちって一体どういう組織なのか気になりますが、でも、桜花がずっと隠して持っているよりは木島さんに預けた方が安心なので、結局この部品は木島さんに預ける事にしました。
やっぱり、木島さんなら悪いようにはしないと思います。
それで、この部品を台湾のお土産袋に包んで木島さんに渡したら、なんだかすごく安心してしまいました。
やっぱり木島さんに相談してみてよかったです。






橘花

 今日、桜花提督は例の部品の事を木島中将に相談すると言う事で、私も同席する事になった。
それで木島中将に、この部品に関する一連の話を聞いてもらったのだが、彼の反応は意外とあっさりしていて、どうと言う事でもないといった雰囲気である。
ただこれは、桜花提督を安心させる為にそのような態度をしたのか、本当にどうと言う事でもないのかは分からないが。
それで結局、この部品は細かく調べてみる必要があると言う事で木島中将に預ける事になった。
しかしやはり、彼もこの件を軍令部に報告する気は無いようで、部品の検査も、なにやら軍管轄外の組織を使うようである。
軍管轄外の組織とは一体なんなのだろうか。
この木島中将は、艦の外ではまた違った顔を持っている様だ。
なんだか非常に気になるが、今回はあまりその辺を深く詮索するべきではないような気がしたので、黙っておく。
とにかく私がいるこの戦艦飛鳥という世界の外側には、私が見ることは出来ず、予測する事すら出来ない複雑な世界が広がっていることは確かである。








皇紀2665年 11月10日


桜花

 あの部品を渡してしまってからというもの、桜花の不安感はすっかり取れて元気になりました。
やっぱり私って単純なのでしょうか。
それで、呉港への上陸許可が出ているので、今日はうめはなと一緒に外に出る事にしました。
でもやはり、対テロ警戒中ということで防弾装備は付けていかねばなりません。
あと港湾警察の方も同行するということです。
呉って連合艦隊母港なのに、なんだか他の港よりいろいろ制限が多いのはなぜなんでしょうか。
考えてみれば、艦隊が呉に入る事はしょっちゅうなのに、桜花が呉港に上陸する事ってほんと滅多に無いですよね。
まあ、桜花の集中整備は本国でしか出来ないから、艦隊が呉に帰港した時にあわせて桜花の集中整備を行っている事が主な原因なのですが。
ということで呉上陸です。
それで、いろいろいってみようかと思ったのですが やはり行けるのは港湾施設内だけで、しかもなんだか「これ以上は危険なので駄目」というのが多すぎてあんまり面白くありません。
結局すぐに飛鳥に帰ってきてしまいました。
ちょっと つまんなかったです。






橘花

 桜花提督は、例の部品を木島中将に渡してしまったらすっかり安心してしまったらしく、今日は梅花と一緒に呉港の散策に出かけてしまった。
この人は全く・・・能天気と言うか・・・








皇紀2665年 11月11日


桜花

 今日も上陸許可が出ていたのですが、上がってもあんまりおもしろくないので今日は甲板で釣りをすることにしました。
うめはなはまた「かぶとがにがくるよ」と言って怖がっていましたが、いくらなんでも呉の港にまでカブトガニが来るはずは無いので大丈夫です。
それで一人で甲板でぼーっと釣りをしていたのですが、しばらくすると橘花さんが来ました。
橘花さんって桜花が釣りをしていてもあんまり見に来たりとかしないので、ちょっと意外です。
それで今日は橘花さんと二人で、特に何か会話をするわけでもなく、ただぼーっと釣りをしていました。
結局なんにも釣れなかったんですが、こういうのも、まあ、いいですよね。





橘花

 例の部品の件から、どうも私は・・・自分の存在という物に不安を感じるようになった。
私の知らない所には、とても重要で複雑な事実がある筈なのに、私には全くそれを知る事は出来ない。
当然、軍用兵器として造られた以上、その機能のみ正常にこなせばそれ以上の事は考える必要も無いのだが。
しかし、それを考え始めると、どうにも不安になる。
一体、何を信じれば良いのか・・・分からなくなる。
軍令部の人間も、整備の人間も、参謀部の人間も、私がうまく機能するように、うまく物事の辻褄を合わせているだけのような気がしてくる。
私の生活空間のほぼ全てを占める、この戦艦飛鳥も・・・実は全く存在などしておらず、私の頭の中に挿入された単なる記憶情報の一部なのかも知れない・・・などという事まで考えてしまう。
ただ・・・
 甲板に出てみると、桜花提督が釣りをしている。
私を見付けると、彼女はただ・・・
にっこり笑う。








皇紀2665年 11月12日


桜花

 今日もとくにすることが無いので甲板で釣りをしています。
それにしても今日はすごく寒いので、艦長さんの七輪を借りています。
それでもやっぱり寒いので、今日はすぐに艦内に戻りました。
こういう寒い日は、飛鳥庵でお茶を飲んでいるのが一番いいです。






橘花

 今日も桜花提督は甲板で釣りをしている。
付いていこうかと思ったが、あまりに寒いのでやめておく。








皇紀2665年 11月13日


桜花

 第1艦隊は全艦補給を終え、呉を出港します。
でもまだ今のところ任務は与えられていません。
またしばらく洋上待機になるのでしょうか。





橘花

 本日、第1艦隊は全艦補給を終えて、呉を出港。
洋上待機。








皇紀2665年 11月14日


桜花

 しばらく洋上待機になるだろうと思っていたら、今回はすぐに次の司令が来ました。
ただ、今回の任務はまた例の遠隔司令の訓練で、結局のところ第1艦隊は瀬戸内海から動かないみたいです。
それで今回の遠隔司令では、旗艦は本土の回線と無線接続した後、海底ケーブルを経由してトラック基地の発信塔からトラック基地所属の艦隊を指揮するという事です。
これだと衛星を使わなくても遠くの艦隊を操作できるので便利ですね。
問題は信頼性ですが、それを今回の訓練で試してみる訳なんです。
明日より桜花は飛鳥と接続して試験開始です。





橘花

 軍令部より下令。
また遠隔司令試験を行うらしい。
しかし今回は今までのとは違って、なにやら海底ケーブルを使うらしい。
明日より試験開始。








皇紀2665年 11月15日
















皇紀2665年 11月16日
















皇紀2665年 11月17日
















皇紀2665年 11月18日
















皇紀2665年 11月19日
















皇紀2665年 11月20日
















皇紀2665年 11月21日


桜花

 遠隔司令試験は終了しました。
終了と言うより、なんだか途中で切り上げたみたいな感じです。
どうも、今回の遠隔司令はあまりうまく行ってないみたいで、主な原因は、飛鳥の司令情報を無線信号から有線信号に切り替える際に、なんだかいろいろと良くないということです。
飛鳥の司令情報は敵に傍受されてしまっては大変なので、ある特定の状況を満たしていないと受信できないように細工してあって、さらに受信されてしまっても、ある特定の状況を満たしてないとそれを解読する事は出来ないようにいろいろ工夫してあるのですが、それは無線通信で使用する際にうまく機能するようになっているので、今回のように有線での通信部分が非常に長い場合は、その部分でも傍受が出来ないように新たに細工する必要があるんですね。
つまりこれがなんだかうまく行ってないみたいなんです。
(ていうか、桜花もよく分からないんですが)
これはたぶん、実用化にはまだ時間が掛かりそうです。
でも、仮にこれが実用化されたとすると、もう第1艦隊は瀬戸内海から出る必要が全くなくなってしまいますよね。
むしろ、艦隊司令部を洋上にする必要すらなくなってしまうのではないでしょうか。
そうなると、ちょっと・・・・嫌ですよね。






橘花

 遠隔司令試験、中断。
無線信号から有線信号に変換する際の接触不良が原因との事。








皇紀2665年 11月22日


桜花

 軍令部より移動指示が来ました。
今回の移動目標は、久々にトラック基地です。
なんだかずいぶん行ってなかったような気がするので、すごくうれしいですね。
うめはなも大喜びです。
それにしても、米国海軍を刺激しないように連合艦隊旗艦を呉まで下げたのに、また再びトラックまで上げちゃっても大丈夫なんでしょうかね。






橘花

 軍令部より移動指示。
今回の移動目標はトラック基地。
桜花親子はもう大喜びである。
何がそんなにうれしいのか。








皇紀2665年 11月23日


桜花

 今回の第1艦隊のトラック基地移動に伴って、すれ違いにトラック基地所属の第13機動艦隊が那覇基地に移動になるそうです。
どうやら米国との裏会談で、前線即応海域に置ける艦隊の数が設定されたんじゃないかって木島さんが言ってました。
そんな事まで話し合いで決めれるんなら、いっそ軍隊も共有すれば予算の無駄がなくていいのに。
なんて事を高価な軍用兵器である私が言うのもなんなんですが。
それにしても第13艦隊と引き換えに、第1艦隊を前線に上げてもいいなんて。
米軍は我々第1基幹艦隊の事を、単なる海軍の象徴ぐらいにしか思ってないのでしょうかね。
確かに艦艇数は第13艦隊より少ないのですが。






橘花

 第1艦隊はトラック基地に向かい航行中。
どうやら代わりに第13艦隊を那覇まで下げるらしい。








皇紀2665年 11月24日


桜花

 今日は特にすることがないので飛鳥庵でうめはなとお絵描きしています。
でも桜花はすごく絵がへたなので「あすかをかいて」なんて言われても、そんなの描けるわけありません。
仕方が無いのでとり1を描いたりしたんですが「かぶとがに?」と言われてしまいました。
悲しいです。
でも、うめはなは桜花よりも もっと絵がへたなんですよ。
何を描いても丸描いてちょんちょんちょんです。
桜花を描いても木島さんを描いても全部丸描いてちょんちょんちょんなので全く区別がつきません。
一生懸命描いてるのは分かるんですが。
そういえば、うめはなは桜花の事をずっと「おうか」と言ってるのかと思ったら、よく聞くと「おかあ」と言ってるようにも聞こえます。
それで実際どっちなのか気になったので、その後うめはなが私のことを呼んでくれるのをずっと待っていたんですが、なんだかだんだん眠くなってきて、そのうち眠ってしまいました。
結局、どっちだったんでしょうね。
「おかあ」だったら、ちょっと・・・うれしいですね。
うめはなの描いた絵は飛鳥庵の壁に張るんだそうです。






橘花

 今日は特にすることがないので艦橋で茶を飲んでいる。
すると木島中将が来てしばらく話をするが、例の接続部品の話は結局しなかった。
彼はその話をあえて避けているとは思わないが、なぜか聞き出す気になれない。








皇紀2665年 11月25日


桜花

 まもなくトラック基地所属艦隊の遠隔司令可能海域に入ります。
ということで、明日から艦隊の遠隔司令訓練を開始します。
ただ、あまり大規模にやることは出来ませんから、艦隊そのものはあまり大規模に動かさず通常の哨戒行動のように見せる必要があります。
まあ、基本的にこの手の訓練はもともと見た目は地味なんですが。





橘花

 明日よりトラック基地海域にて、遠隔司令訓練を開始。







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