皇紀2664年 3月20日


桜花

 本日、私は連合艦隊提督に着任しました。さらに海軍大将という階級も頂き、身も引き締まる思いです。
・・・・と、言いたい所ですが、本当はよく分かりません。
海軍大将という地位は、普通何十年も努力に努力を積み重ねてやっと頂けるものだというのに、司令電算機である私の場合は生まれてまだ一年足らず、その重みという物を理解するには、私の頭はまだまだ経験不足です。
着任式は巡洋艦「三笠」の甲板で行われました。

本来ならば天皇宮殿で行われるべきものだそうですが、私の場合まだ上陸の許可が出ていないのでこちらで行われることになりました。
とにかくよく分からないので、言われた通りに階級章を頂き、言われた通りに礼をして、言われた通りに御払いを受けました。
全てがとてもありがたい事なんだそうですが、私にはなんだかさっぱりわかりません。
今思えば、もう少しうれしそうな顔をしておけばよかった様な気がします。














皇紀2664年 3月21日


桜花

 今日でこの第17艦隊ともお別れです。
私が去った後は、この第17艦隊は解隊され、巡洋艦「三笠」は第2機動艦隊、その他の船は予備役に回され、そのほとんどは分解処分されるそうです。
私を育てる為にがんばってくれた船達とお別れするのはとても悲しいです。
・・・・と、言いたいところですが、本当はよく分からないので、研究員の方々に聞いてみたところ、悲しんでもいいのではないかという事なので悲しむことにします。
明日から私は第1基幹艦隊に配属され、戦艦「飛鳥」に身を置くことになります。
戦艦「飛鳥」はとても大きくて伝統のある船だと聞きます。どんな船なのか見るのが楽しみです。
これは本当に楽しみです。
私は生まれてまだ日が浅いせいか、新しいものを見る事がとても楽しく感じます。
普通の人間ならば、こういう場合もう少し複雑な気持ちになるのでしょうか。













皇紀2664年 3月22日


桜花

 本日、戦艦「飛鳥」に入艦しました。流石に大きな船です。

実際は正規空母より一回り小さいそうですが、巨大な大砲や迫力ある艦橋の為かとても大きく見えます。
本当は艦内をいろいろ見て回りたいのですが、今日は入艦式や前任の連合艦隊司令長官からの任務、装備引渡し手続き、それと長官帽子の受渡式などが丸一日かかってしまったので、艦内探検は明日にしようと思います。
一通りの手続きが済んだ後、私の新しい部屋に案内して頂きました。
こちらも流石に広いです。それと、なんというかうまく表現できないのですが、雰囲気のある部屋です。
「三笠」の私の部屋は、利便性第一に考えて設計された部屋でしたが、こちらはというと、いろいろ余計なものが沢山ついています。
窓も無いのにカーテンだとか、料理するわけでもないのにキッチンとか食器棚とか、
ソファーとかクッションとか。
始めて見るものばかりだったので私は唖然として立ち尽していると、参謀長の木島さんが「参謀部は年寄りばかりだから女の子の趣味とかわかんなくてねえ」と、言ってました。

つい先ほど気付いたのですが、女の子って私の事だったのでしょうか。
とにかく私は、この部屋はとてもいいと思います。













皇紀2664年 3月23日


桜花

飛鳥入艦2日目。
今日は特に任務は無かったので艦内探検をしました。
 
まずは参謀司令室に行き、参謀長の木島さんに挨拶しました。
その時木島さんに部屋はどうかと聞かれたので、とても良いと思うと答えるとなんだかうれしそうでした。
その後他の参謀部の人に「現在飛鳥の兵員士気は最悪な状態なのであまり歩き回らない方が良い」と言われました。
その理由を彼は言いませんでしたが何と無く分かります。
突然艦隊提督が年端も行かぬ少女になったら士気も下がって当然ですよね。
でも、部屋に閉じこもっている訳にもいかないのでとりあえず一番見たかった一番砲塔内部に入ってみることにしました。
ところがこれが大失敗で、中に入った途端砲塔長みたいな人に「ここは小娘の来るとこじゃねえ!」と怒鳴られてしまいました。
結局その後私は一日中部屋に閉じこもっていました。
今日はちょっと悲しい気分です。
どうして私は少女の姿をしているのでしょうか。
連合艦隊提督にするのなら、せめてもう少し貫禄ある姿にしてもらえれば良かったのに・・・













皇紀2664年 3月24日




 今日から第1基幹艦隊は外洋に出ます。
目的はまだ聞かされていませんが、恐らく私の艦隊との適応度を見るための試験を行うのだと思います。
第1艦隊は基本的に単独で戦闘することの無い艦隊なので、護衛戦力以外の戦闘能力は持っていないのですが、今回は第4機動艦隊所属の第12駆逐戦隊と第8防空戦隊が戦列に加わりました。
しかし、航空戦力が防空軽空母一隻のみなので、機動戦闘を行うには極めて貧弱と言わざるを得ません。
軍令部はこの艦隊を持って私に何をさせようとしているのか、不安です。
目的地は硫黄島近海域。何事も無ければ明日の夜には到着する予定です。














皇紀2664年 3月25日




 本日、海軍軍令部から作戦内容が言い渡されました。模擬艦隊戦です。
予想はしていましたが今回は戦力がとても貧弱です。しかも、相手は第8機動艦隊です。
もしこれが実戦で、これだけの戦力差があれば迷わず撤収すべきだと思います。
特に我が第1艦隊空母「蒼龍」の艦載機編成は防空特化しているので、電探隠密性を維持しながら対艦攻撃が出来る六〇式艦爆が、たったの10機しかいません。
対して第8艦隊の空母「益城」には42機も搭載されています。

この差は大きいです・・・。
我が第1艦隊の作戦目標は「硫黄島防衛」。とにかく敵強襲揚陸艦を硫黄島近海20海里以内に侵入させたら負けです。また、作戦行動不能になるほどの損害を受けても負けです。
逆に、硫黄島を7日間守りきるか敵艦隊に作戦行動不能になるほどの損害をあたえれば勝ちです。
木島さんが言うには毎年定期演習として第8艦隊との模擬戦は行われているそうですが、戦力差もあって連戦連敗してるそうです。
木島さんは「負けて当然だから」と言っておられましたが、私は、負けるわけには行きません。
ここで勝っておかないと私はずっと女の子のままになってしまいます。
私は連合艦隊提督なのですから。
勝たなければ。














皇紀2664年 3月26日




 現在、第1基幹艦隊は駆逐艦群を奥義型に配置し基本的な対峙型防御陣形のまま待機しています。
明日の1700時、軍令部からの「敵艦影見ユ」との通信を合図に戦闘が開始されます。
その後は軍令部からの情報は全く受けられません。
もちろん偵察衛星も使用不可。更に守るべき目標である硫黄島の局地航空隊も使用不可です。
とにかく大日本帝国がどんな状態になったらこんな悪状況が重なるのか考えてしまいます。
でも、考えていても仕方がありません。実際、中枢司令電算機に接続されてない状態の私は全く素人同然ですから、考えるだけ無駄です。
私は明日の0600時から中枢司令電算機に接続される予定です。接続されると、戦闘が終了するまで生活の全てが出来なくなります。もちろん寝る事も食べる事も、日記を脳内電子記憶に残す事も出来ません。
だから今日は・・・早く寝ましょう。














皇紀2664年 3月27日
















皇紀2664年 3月28日
















皇紀2664年 3月29日


桜花

 まだ戦闘は終わっていないというのに、私は接続を解除されています。
私は司令電算機に接続されてる間の記憶は全くないので、何が起きているのか分かりません。
とても不安です。
話によると、味方の駆逐艦「村雨」が敵航空機の強襲で大破したと見なされ戦列を離れたという事です。

とても不安です。
不安なので、4月1日に各艦隊司令部に配布予定の桜花自己紹介の文章を見直してみます。
・・・・誤字発見、危ないところでした













皇紀2664年 3月30日
















皇紀2664年 3月31日


桜花

 戦闘は終了しました。
とても疲れています。死にそうに眠いです。














皇紀2664年 3月32日


桜花

 なんだか意識がはっきりしなくて、ここ数日間の記憶が全くありません。
なんでこんなに疲れてるのかも思い出せない状態です。
仕方なく参謀司令部に行って木島さんに聞いてこようと思ったのですが、部屋のドアを開けてみると、なんと、一番砲塔隊員の方々がずらっと廊下に整列して立っていました。しかも全員正装です。
これはびっくりしました。私は何がなんだか分からなくなって、とにかくまた部屋に戻ってよく考えてみたのですが、結局よく分からなかったので、たぶんこれは何かの儀式だと思い、とりあえず私も急いで正装して表に出たのですが、やっぱりよく分からないので、近くにいた隊員の方に「私はどうすればいいですか?」と聞いてみました。すると、隊員の皆さんがそろって「先日の御無礼、申し訳ありませんでしたー!」と叫び出しました。私はもうびっくりしてその勢いで私も大声で「はい!ご苦労様でした!」と、言ってしまいました。
それを遠くで見ていた木島さんに大笑いされてしまいました。
後でこれはどういう事なのかと木島さんに聞いてみたところ、隊員の方々は以前私を小娘呼ばわりした事について謝っていたんだそうです。
しかも、その為に私が起きてくるまでずっと廊下に整列して待っていたんだそうです。
私、そんなに気にしてなかったので 別にそこまでして謝ってくれなくても良かったのですが。
なんだか申し訳ない気分です。














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