皇紀2666年 7月1日






















皇紀2666年 7月2日






















皇紀2666年 7月3日






















皇紀2666年 7月4日






















皇紀2666年 7月5日






















皇紀2666年 7月6日


桜花

 遠隔司令試験は終了しました。
今回もやはり、あまり芳しい結果は出なかったみたいですが、でも今回の試験で得られた情報を基に、まだしばらく研究は続けられるそうです。
まあ、指揮系統の効率化を図るのは良いことだと思うのですが、この装置が完成すると、桜花たちはもう呉から出られなくなるのかも知れないので、ちょっと複雑です。
それにしても、長期接続のあとはおなかがすきます。






橘花

 遠隔司令試験を終了。
今回もあまり芳しい結果は得られす、実用化にはまだしばらく掛かるらしい。














皇紀2666年 7月7日


桜花

 第1艦隊は呉を出港し、再び瀬戸内海にて洋上待機です。
それで午前中に空母艦載機の収容を終えると今日はとくにすることが無くなったので、部屋に戻ってシノさんとお話でもしようと思ったのですが、シノさんはずっと戸棚の中で全く動きません。
ここまで全く動かないと、少し心配になってきます。
それでしばらく戸棚を空けてシノさんが動き出すのを待っていたのですが、そのうちにシノさんは、真ん中についている小さな穴からチカチカと赤い光を出し始めました。
これはひょっとして、なにかまずい事になっているのではないでしょうか。
すると突然うめはなが「しのたんコンセントつけてっていってるよ」と言うのです。
うめはなはなんでそんな事が分かるのでしょうか。
そうです、この赤い光は「光波送信」です。
シノさんはうめはなと光波で会話していたのです。
さすがはシノさんです。見た目はポットでも高性能です。
(ていうか桜花は装備をつけないと光波受信が出来ないので、なんだかうらやましいです)
それで、とりあえずその辺にあった昔使っていた給湯ポットのコンセントをシノさんにはめてみたんですが、しばらくしたらシノさんからにょっきり手がはえてきて「どうも〜」と言ったので一安心です。
シノさんの話によると、ずっと戸棚の中に隠れていたら、ついうっかり充電をするのを忘れてしまったのだそうです。
しかもシノさんの中に入っている生体頭脳は、じっとしていても常に電力を消費するそうで二週間以上充電しないでいると、なんと、死んでしまうんだそうです。
そんな大事な事をついうっかり忘れてしまうなんて・・・・ダメじゃないですか、シノさん。
(しかも光波送信とか出来て高性能なのに、充電は家庭用コンセントから行うというのはどうなのでしょうか)
まあとりあえず・・・今日はシノさんが死なないでよかったです。






橘花

 第1艦隊は呉港を出て瀬戸内海にて洋上待機。
夕方あたりに艦橋で茶などを飲んでいたら、桜花提督も上がってきて、なにやら「シノさんが死んでしまう所でした」などと言っている。
なんだかよく分からないが、確かにあれは棚から落としたりしたらそのまま死にそうな感じだ。
あれを桜花提督の部屋に置いとくというのも、少し危険かも知れない。














皇紀2666年 7月8日


桜花

 本日軍令部より移動指示が来ました。
移動目標は択捉島の単冠湾です。
なんだか涼しそうな場所ですが、一体そこで何が行われるのでしょうか。
でも桜花は始めていく場所なので、少し楽しみです。






橘花

 軍令部より移動指示。
移動目標は択捉島、単冠湾。
択捉島は現在、完全に帝国海軍の所有地域となっていて、民間人はもちろんの事、陸空軍関係者も進入には海軍の許可が必要となっている。
通常は新兵器の開発などでたまに利用されたりするそうだが、第1艦隊が単冠湾に入るというのはごく稀ということらしい。














皇紀2666年 7月9日


桜花

 第1艦隊は現在、択捉島に向かい北上中です。
甲板に出ると外の空気はだんだん涼しくなってきたみたいで、なんだか気持ち良いです。
すると、今日は珍しく橘花さんも甲板に出てきたのでしばらくちょっとお話したりしていたのですが、橘花さんもシノさんのことが気になってるみたいだったので、その後桜花の部屋に一緒に行きました。
シノさんはとにかく誰かとお話をするのが好きみたいで、
橘花さんが来ると嬉しそうにお茶をいれたりしてました。
(なんだか最近ではもうシノさんは桜花の部屋のメイドさんみたいです)
でも今日のシノさんのお話は、なんだかちょっと深刻な話みたいです。
シノさんの他の端末機から寄せられた情報によると、
なにやらドイツの人たちに少し変わった動きがあるそうです。
とにかく極秘裏に行われている事なのでシノさんにもよく分からないそうなのですが、ひょっとしたら、またドイツの人たちが直接桜花自身と接触してくるかもしれないとの事です。
ドイツの人たちというと、突然チョコレートをくれたりよく分からない場所でよく分からない少女とあわせたりとか、とにかくよく分からないことばかりしてくるのですが、橘花さんの話によると、ドイツの人たちは軍令部と裏で繋がってるそうなので・・・
・・・ひょっとしたら今回の移動指示も、それに関係してるのかもしれません。
でもとにかくよく分からないので、どうしようもないですよね。
ただ、こう言っては何なんですが・・・正直ちょっと、不気味です。






橘花

 第1艦隊は択捉島を目指し北上中。
今日はとくにすることが無いので久々にシノ中将を見に行ってみる。
それで桜花提督の部屋にお邪魔したのだが、とにかくこの給湯ポットは私を見るやせっせと茶などを淹れたりして相変わらず滑稽である。
ただ、その滑稽な動きとは裏腹に、彼女の話はやや深刻な感じで、話によるとなにやらまたドイツの方で奇妙な動きがあったそうで、場合によっては近いうちに我々に接触を試みるかもしれないとの事。
そうすると・・・この突然の単冠湾への移動指示も、それに関係しているのだろうか。
仮にそうだとすると、単冠湾は艦隊が極秘会合するには最適と考えられる場所ではあるが、わざわざ艦隊そのものを彼らと接触させるという事にはどういう意味があるのだろうか。
彼らと直接この連合艦隊旗艦を会わせる理由としてひとつ考えられるのは、我が帝国海軍の最新鋭装置であるこの司令電算機の情報提供である。
そしてその見返りに彼らから何かを得ようと考えているのかもしれないが、実際彼らにこの艦隊司令電算機の情報を渡したとしても、彼らにそれを有効に扱えるだけの海軍力があるのかどうか疑問である。













皇紀2666年 7月10日


桜花

 第1艦隊は択捉島単冠湾に到着しました。
択捉島には帝国海軍の極秘要塞があるなどと聞いていたのでどんなにすごい物かと思って期待してたんですけども、実際は小さな滑走路とちょっとした防空設備があるだけの、なんともこじんまりした施設です。
一応軍港もあるのですが、第1艦隊が停泊できるほどの規模ではないので、結局湾内に碇を下ろして洋上待機です。
でもこの辺りは夏でも空気がからっとしていて、なんだか気持ちがいいです。
野田さんの話によると、
択捉島は手付かずの自然がいっぱい残っていて、野生生物の宝庫なんだそうです。
これはちょっと、島を観察してみるのも良いかもしれませんね。






橘花

 第1艦隊は択捉島、単冠湾に到着。
択捉島には中規模以上の艦隊が補給できるほどの港湾設備が無いので、結局そのまま洋上待機。
桜花提督は択捉島が野生生物の宝庫と聞いて、なにやらはしゃいでいるが、私は昨日のシノ中将の話がどうも頭に残って、やや不安である。
軍令部は我々をこの何も無い殺風景な場所に移動させて、一体何をさせようとしているのか。













皇紀2666年 7月11日


桜花

 第1艦隊は昨日に引き続き、単冠湾にて洋上待機です。
それで今日はとくにすることが無いので、うめはなと二人で艦橋の露天監視台にあがって、双眼鏡で島の観察です。
択捉島は野生生物の宝庫と聞いていたので、どんなにたくさんの生き物がいるかと思っていたのですが、見えるのは幹の白い不思議な木ばかりで、生き物はさっぱり見当たりません。
それでもしばらく双眼鏡で島のいろんな所を見渡していたのですが、そしたら突然、うめはなが「しか!しか!」と大声で言ったので桜花もそのあたりを見てみたのですが、結局見付ける事は出来ませんでした。
その後またしばらくしたらうめはなが「きつね!」と言うのでまた桜花もその辺りを見てみたのですが、やっぱり見つけられません。
なんでうめはなばっかりそういうのを見つけるのでしょうか。
桜花はやっぱり、注意力が足りないから見つけられないのでしょうか。
なんだか悲しくなってきます。
今日は結局一日中島の観察をしていたのですが、桜花が見ることの出来た野生生物といえば「とり1」ぐらいで(まあとり1は桜花が養ってるようなもんなので野生生物とは言えないかもしれませんが)後はまったく見れませんでした。
悲しいです。
でもうめはなは大満足みたいだったので、良かったです。
・・・でも悲しいです。






橘花

 今日は特にする事が無いので、艦橋に上がって雑誌などを読んでいる。
しばらくしてから窓の外を見ると、露天監視台に桜花提督とうめはながいる。
どうやらそこの双眼鏡で島の観察をしているみたいだが、桜花提督の頭の上には、なんだか見慣れない不思議な鳥がとまっている。
調べてみるとこれは「エトピリカ」という鳥だそうで、オホーツク地域では絶滅の危険が大きい非常に珍しい鳥だそうである。
そんな珍しい鳥を頭にのせながら、北海道全域にあふれんばかりに生息する鹿や狐を必死に探す桜花提督である。
・・・まあ、彼女らしくて良い。
その後飛鳥庵で「今日はとり1しか見れませんでした」などと店主に話してる彼女に「エトピリカ」の話をしようかどうか大いに迷ったが、結局しない事にした。













皇紀2666年 7月12日


桜花

 今日も第1艦隊は位置変わらず洋上待機です。
夜中に国籍不明機の接近が確認され、電探防御が施されている事から軍用機かと思われるのですが、軍令部から「これに対応する必要無し」との連絡があったので、気にしないでおきます。
その後この飛行機は、どうやら択捉島の基地に着陸したようですが、結局なんだったのかは分かりません。
木島さんの話によると、この辺では海軍の新兵器の試験とかをよくやったりするそうなので、ひょっとしたらそういう類の物なのかもしれません。






橘花

 夜遅くに国籍不明機の接近を確認。
しかし軍令部から「これに対応する必要無し」との連絡が入ったので、警戒態勢のまま待機。
この不明機はさらに接近し、択捉島基地に着陸。
そういえば以前シノ中将が、近いうちにドイツの方から接触があるなどと言っていたが。
・・・これは若しや・・・














皇紀2666年 7月13日


桜花

 本日、軍令部から「旗艦に来客がある」との連絡を受け、到着を飛行甲板で出迎える事にします。
今までの経験から考えると、軍令部から直接戦艦飛鳥への来客の情報を知らせてくる時は、なんだかとても偉い人が来る事が多かったのですが、今回は海軍試験開発部の方々ということで、桜花の服装とかにも特に指示はありませんでした。
でも、試験開発部の方々なら通常の補給の時とかにもしょっちゅう飛鳥には出入りしているのですが、軍令部から直接前もって連絡するということは、何か特別な事があるのかもしれません。
それで、桜花と橘花さんと、あと参謀部の方々とで飛行甲板で待っていたら、ほぼ予定時刻ぴったりに択捉島から海軍の大型旋翼機が2機来ました。
1機目の機体からは、軍令部の方々と開発部の方々、それと見慣れない制服を着た方が数名(どうも日本人ではないみたいです)降りてきました。
で、その見慣れない制服の方々は、桜花に何か言うでも無くすばやく2機目の旋翼機の方に行って、機体の扉が開くとなんだか宣誓の誓いをする時みたいな変な敬礼(?)をして、中の人が出てくるのを迎えます。
どうやら2機目に乗ってる人はすごく偉い人のようですが、その2機目から出てきた人を見てびっくりです。
この人は、以前(確か正月ぐらいに)よく分からない天井の高い真っ赤なカーテンの部屋にいた、あの少女じゃないですか。
ということはこの人たち、やっぱりドイツの人たちなんでしょうか。
それでその少女は、旋翼機から降りると私の前に来て少し笑ってから
「あなたが桜花さんね」
と日本語で言いました。
この人、以前あの部屋で見たときは座っていたし遠かったのでよく分かりませんでしたが、
近くで見ると、本当に目鼻立ちがくっきりしていて、氷の彫刻みたいにきれいです。
それにモデルみたいに背が高くって、すごく足が長くって、ちょっとあっけに取られてしまうくらいです。
でもなんだか、あの部屋で見たときとはぜんぜん雰囲気が違います。
なんというか毅然としてるというか、気が強そう、というか、以前のおびえたような表情をしていた彼女とはまるで別人のようです。
はっきり言って、なんだか怖い感じです。
でも連合艦隊提督が、少女におびえていては艦隊の士気に影響するので、
とりあえずなんでもないような表情で
「以前お会いしましたよね?」
って聞いてみました。
すると少女は、なぜかちょっとムッとした表情になって、
「それはアドルファのことね」
と言いました。
どうやら、以前あの部屋で見た少女はこの人ではないみたいです。
それにしても本当によく似ているので、双子なのかと思ったのですが
「一応双子ってことにしてるけど、アレとは全くの別物」
なのだそうです。
しかもその後彼女は、すごく不機嫌な表情で
「アレは総統閣下の御慈悲に答える事の出来ない欠陥品よ。あんなのと私が似たような姿をしているかと思うと気持ちが悪くなるわ」
などというのです。
そして私に押し付けるような言い方で
「私の名前はアドルフィーナ」
と・・・これは自己紹介なんでしょうか。
なんだかこのアドルフィーナさんは、そのアドルファさんの事がすごく嫌いみたいなので、本当はいろいろと聞きたい事もあったのですが、やめておきました。
でも会話を全くしないのもなんなのでとりあえず、ずっと前に戦艦飛鳥に突然、裏に「Adolf」と書いたチョコレートが届いた事があったのですが、ひょっとしたらこれを贈ってくださったのはアドルフィーナさんかもしれないかと思いその話をしたら、彼女は一言
「はあ?」
と言って終わりです。
どうやらチョコレートは彼女とは関係ないみたいです。
それでその後彼女は
「あまり時間も無いから、さっさと用事を済まさせてもらうわ」
と言って、私の横をつかつかとすり抜けて行って、
まるで自分の家に入るような感じで飛鳥の艦内に入っていくのです。
一体・・・この人は・・・
でも軍令部の人も同行しているので、一応これは帝国海軍も許可してるのでしょう。
それで彼女はどこに行くのかと思ったら、なんと飛鳥の司令中枢に入って行くでは無いですか。
飛鳥の艦内要員でも入るのにはそれなりの手続がいるこの場所に、どう考えても帝国軍人ではないこの人を入れてしまって良いのでしょうか。
そして彼女はまるで自分の部屋のように、中枢内のいろいろな装置を見て回って
「なかなか素敵じゃない」
なんて言いながら、その辺にあった給湯ポットから勝手にお湯を出しては
「なにこれ、すごいぬるいじゃない」
なんてケチつけたりするのです。
・・・一瞬、何でこんな所に給湯ポットがあるのかと疑問に思いましたが・・・そんな、全くの部外者に、お湯がぬるいのなんのって言われる筋合いは無いと思います。
その後彼女は、なんと桜花の司令席に勝手に座って
「それじゃあ、始めるわ」
などと側近の人に言って、挿入プラグを取り出そうとするのです。
これには桜花も驚いて
「何をするんですか!」
と言おうと思ったらその前に、橘花さんが出てきて、
そのアトルフィーナさんに向かってものすごい怖い顔で
「説明していただけませんか?」
と言うのです。
・・・橘花さん、すごく怖いです。回りの空気が変わったような感じがするくらい怖いです。
これにはさすがにアドルフィーナさんも怖いと思ったのか、一瞬まじめな顔になったのですが、しばらくするとまた不敵な笑みを浮かべて、
「説明してもいいけど・・・ここで全部話したら困る人もいるんじゃない?」
なんて言うのです。
・・・全く、私には訳が分からないのですが、しばらくの沈黙の後に彼女が言った「説明」も、さらに訳が分かりません。
あの大戦の後、敗北したわが国から兵器製造技術を根こそぎ奪い取っていった連合国軍も、恐怖して開く事の出来なかった神の箱を、あなたたち日本海軍は持ち帰ってしまったのよ。それであなたたちは強い力を得たけれど、その結果我々に従わざるを得なくなった。偉大なる総統閣下は、あの時既にこうなる事を予想しておられたのね
・・・あの大戦って・・・第二次世界大戦のことなんでしょうか。
とにかく全く訳が分かりません。
「どういうことですか?」って聞こうと思ったのですが、その時話に割り込むような感じで軍令部の人が、「提督、どうかここは穏便に・・・」と言って、私たちにものすごく頭を下げるので、なんだか桜花も恐縮してしまって何も聞けませんでした。
それにしてもアドルフィーナさんも、桜花の挿入プラグが見たいんなら、なんだか訳の分からない事言ってないで「見せてほしい」って一言言えば良いじゃないですか。
まあ見せて減る物じゃないし、軍令部の人もすごく頭を下げてるので、ここは許可しときますが。
・・・そしたらなんとびっくりです。
アドルフィーナさん、その挿入プラグを自分の耳の後ろに差し込んだのです。
桜花は一瞬「え?」っと思いましたが・・・ひょっとしてこの人・・・・人型電算機だったのですか!
これはどういうことなのでしょうか。
人型電算機は帝国軍固有の究極兵器ではなかったのでしょうか。
それをしかも、欧米連合の属国ドイツが持っているなんて・・・
それじゃあこの状況は・・・・非常にまずい状況なんじゃないですか?!
帝国海軍の戦力状況が、ドイツに渡ってしまうのではないですか?!
そう思って見ていたら、なんだかアドルフィーナさんの動きが変です。
がたがたとけいれんを起こしてるみたいです。
その直後、彼女は強い勢いで挿入プラグを抜き取ると、しばらく頭を抱えてうずくまってます。
・・・一体どうしたのでしょうか。
そしたらその後、彼女は急に立ち上がって、軍令部の人に向かって
「貴様!何か細工したな!!」
とか言ってすごく怒ってます。
何がなんだかさっぱり分かりませんが、とにかくすごく怖いです。
そしたら今度は、なぜか私を睨み付けて
「・・・そうか・・・お前がやったのか!」
と言って、私になにやら訳の分からない事を言って怒り出したのです。
本当に訳が分からないし、なんだかだんだん私も腹が立ってきて、
「訳の分からない事を言わないでください!だいたいあなたは、連合艦隊旗艦にあがりこんできて、何なんですかその態度は!」
と、怒鳴ってやりました。
そしたら彼女は、私が怒鳴った事に驚いたのか、急に静かになりました。
・・・ていうか、彼女だけでなく、参謀の人たちや橘花さんまで、驚いたような顔で私を見ています。
・・・え、今の桜花、そんなに怖い顔してましたか・・・?
その後、整備の人たちや、ドイツの人たちが司令席をいろいろと調整したりしてましたが、結局どうにもならなかったみたいで、しばらくしたら彼女たちは帰って行きました。
それで帰り際、旋翼機に乗る前にアドルフィーナさんは振り返って
「我々に逆らうと、後悔することになるぞ」
と私に言ったのです。
逆らうも何も私には全く訳が分からないのですが。
でもその後、彼女は急に私に顔を近付けてきて、それで一体何をするのかと思ったら、
その、
私の唇に、その・・・彼女の唇と・・・チュって・・・されちゃったんです。
それで彼女は少し笑ってから、
「でもあなたの事は結構好きよ」
と言って、そのまま旋翼機に乗って行ってしまいました。
・・・桜花はもう・・・何がなんだか・・・。
しばらく呆然としてしまいました。
その後正気に戻るのにちょっと時間が掛かりましたが、
とにかく今日は、びっくりするような事がいっぱいあって、すごく長い一日でした。
それにしても、結局あの人は一体・・・なんだったのでしょうか。





橘花

 本日軍令部より来客があるとの連絡を受け、後部甲板にて参謀部総出で迎える。
それらは2機の海軍旋翼機にて来艦。
軍令部、開発部の者の後に続いて見慣れぬ制服を着た白人が数人。
恐らくこれがシノ中将が言っていたドイツの人達の様だが、その中になぜか、少女がいる。
その態度と回りの対応を見ると、かなり高貴な所の娘の様だが、
驚くべき事に桜花提督の話によるとこの少女が、以前桜花提督がなにやらよく分からない謎の部屋に連れて行かれた時に会った少女なのだそうである。
という事は、つまりこの少女は現在のドイツ政権の基盤となっている右翼団体の最高指導者「アドルフ」の娘という事になる。
・・・これは、とんでもない人物が来艦したものだ・・・
その後、「アドルフィーナ」と名乗るその少女は、桜花提督にろくに挨拶もせず、飛鳥の艦内に入っていく。
軍令部の人間も、彼女の行動に黙って従う所を見ると、彼女の行動はどうやら帝国海軍も認めてるようだが、更になんと彼女は飛鳥の司令中枢にまで入っていく。
飛鳥の艦内要員でさえ限られた人間にしか入る事が許されないこの場所に、他国の、しかも少女を入れてしまうとは・・・軍令部は一体何を考えているのか。
その後しばらく彼女は、中枢内部を我が物顔で見回し、桜花提督の司令席に座る。
そしてなんと、桜花提督の挿入プラグを取り出そうとしたのである。
これは当然・・・・許される事ではない。
とにかく、即座に彼女の前に行き、説明を求める。
すると彼女は立ち上がり、なにやら難解な事 を言い 始   め 

kkkk甲高 い 雑音し か聞こ  えなかった。
直後、まるで彼女の話を止めるかのように、軍令部の人間が我々に説明不足だった事を謝罪し始めるが・・・このあわて様を見ると・・・この「アドルフィーナ」という少女は、軍令部が我々に知られたくない様な事実でも知っているのだろうか。
その後、桜花提督が許可したので、彼女は再び挿入プラグを取り出したのだが、驚くべき事が起こった。
なんと彼女はその挿入プラグを自分の耳の後ろに差し込んだのである。
まさか・・・この少女は、人型電算機なのか・・・?!
帝国独自の技術により開発された帝国固有の兵器である筈の人型電算機が、なぜ他国の、しかも欧米連合の属国であるドイツが保有しているのか。
・・・全く訳が分からない。
まさか帝国は、この究極技術をドイツに売り渡したのだろうか。
仮に彼女が人型電算機だとすると・・・この状況は非常にまずい。
他国に帝国の艦隊情報が渡ってしまうのではないか。
しかし直後、彼女はなぜか小刻みに異常な振動を始める。
そして、彼女は強引にプラグをはずすと、しばらくうずくまったまま動かない。
どうやら何か問題が生じた様だが・・・その後ゆっくりと顔を上げる少女は・・・
・・・今までの少女とは全く違う・・・
これは普通ではない・・・まるでその場の空気が変わったように恐ろしい形相である。
これ程に恐怖を感じたのは始めてである。
そして彼女は何かを言いながら、桜花提督に向かってゆく。
私は、提督を守らなければならないと思ったのだが・・・なぜか足が動かないのである。
まさか、私は・・・恐怖で足が竦んでしまったとでもいうのか。
しかしさらに驚いた事に、なんと桜花提督はこれ程の恐怖に全く動じていないのか、逆に彼女に怒鳴り返したのである。
桜花提督は、この恐怖を感じていないのか。
それとも、それを上回る程の度胸の持ち主なのか。
とにかく・・・・すごい光景である。
その後、桜花提督に怒鳴られて怖気づいたのか、少女は幾分冷静になり整備の人間に設備の調整などを指示するが、しばらくの後も状態は改善されなかったらしく、結局プラグの接続は諦めたらしい。
そして彼女らは接続できないと分かると、もうここには用は無いとでも言わんばかりに足早に帰って行った。
今思うと、海軍中将として帰っていく彼女らを旋翼機まで見送るべきだったのだが、その時は、まるで嵐が吹きぬけた後のように静かな司令中枢から、私は出ようと思わなかった。
・・・・?・・・・
・・・出ようと・・・思わ  な    かった。

それにしても、なぜドイツが人型電算機を持っているのか。
現在あの国に、人型電算機を有効に使えるほどの軍事力があるとも思えないのだが。
そしてなぜ、軍令部はそれが飛鳥に接続する事を許したのか。
・・・全く、謎である。
とにかく今日は、異常な事が続いたので、私自身やや混乱気味になっている。
深く思考する事が出来ない。
そしてもうひとつの謎は・・・彼女らが帰った後の桜花提督である。
なんだか様子がおかしい。
何か話しかけても、呆然としていて返事をしなかったりするのである。
もしかしたら、今になってあの少女の形相が恐ろしくなったのか・・・と思ったらそういう訳でもない様で。
一体どうしてしまったのだろうか。
心配である。













皇紀2666年 7月14日


桜花

 第1艦隊は軍令部の指示により、再び呉に戻る事になりました。
結局今回の移動の目的は、やっぱりドイツの人々を隠密裏に旗艦に招く事だったのでしょうか。
とにかく昨日は、本当にびっくりするような事がいっぱいあって、未だになんだかよく分からないのですが、一番の驚きは、ドイツも人型電算機を保有していたということです。
しかもそのドイツの人型電算機が、飛鳥と接続するのを軍令部の人たちも黙って見ていたのですから、本当に訳が分かりません。
とにかく桜花が一番思う事は、どう考えても艦隊の運用に関わる重要なことが行われようとしてるのに、なぜ軍令部は我々には何も説明をしてくれないのでしょうか。
もちろん、戦線にいる者には教えない方が良いような事もあるとは思いますが、旗艦内であれだけの事をやっておいて、何も説明が無いのでは、兵士の士気に拘ると思うのですが。
それにあの「アドルフィーナ」さんの態度は・・・なんなのでしょうかっ
他国の旗艦に上がるときには、やっぱり、それなりの礼儀とかってあると思います。
しかもしかも連合艦隊提督に向かって・・・その、突然・・・チュってするなんて、あんまりだと思います。
・・・なんというか・・・よくないです。
ほんとにもう、訳が分からないです。





橘花

 軍令部の指示により、第1艦隊は呉港に戻る。
やはり、艦隊を択捉沖まで移動させたのは、あの連中を艦内に入れる為だったのか。
しかし未だに信じられないのは、ドイツが人型電算機を保有していたという事実である。
どういう理由で、またどういう経緯でそれを造るに至ったのか。
全くの謎である。
また更に重要な事は、そのドイツの電算機が連合艦隊旗艦の司令電算機と接続するのを、軍令部が許可していたという事である。
これは、場合によっては艦隊の死活に拘る。
ドイツと軍令部が裏で繋がっている事は予想できたが、
なぜ彼らにそこまで情報を提供する必要があるのか。
これではまるで連合艦隊が、ドイツの支配下にある様では無いか。
軍令部は一体、ドイツの何を恐れているのか。
それと、癇に障るのはあの「アドルフィーナ」とかいう電算機の、日本人を見下したような態度である。
電算機という分際で、よくあれだけでかい態度ができるものだ。
思い出すだけで腹が立つので・・・もう思い出したくない。














皇紀2666年 7月15日


桜花

 今日は、一昨日の事を考えるとどうにも不安になって仕方が無いので、木島さんに相談してみようかと思ったのですが、なんだか木島さん、いつもと様子が違うんです。
いつもはちょっと笑ったようなにたにたした感じの木島さんが、額にしわを寄せて、
すごく深刻な顔をしています。
こんな木島さん、始めて見ました。
どうにも話しかけづらいので、結局なにも相談できませんでした。
それで今度は橘花さんに話してみようかと思ったんですが、今日の橘花さん、なんだかすごく怖いです。
その、すごく怖い顔で私に「お話があるので来てください」などと言うのです。
それで橘花さんの部屋に行ったのですが、橘花さん、一体どうしたのでしょうか。
桜花は何か悪い事でもしたのでしょうか。
そしたら橘花さん、すごい怖い顔で私をじっと見ながら
「・・・あのドイツ電算機とキスしたって・・・本当なのですか?」
と聞くのです。
なんだかこの状況だと もっと恐ろしい事を言われるのかと思っていたので、ちょっと拍子抜けですが、そうやってまじまじとそういうことを聞かれると・・・ちょっと照れちゃいます。
でも事実は事実なので、
「・・・ええ、まあ」
などと言ったのですが、そしたら橘花さん、急にだーっと走っていなくなってしまいました。
橘花さん、一体どうしたのでしょうか。
すごく心配なので、その後橘花さんを探してみたのですが、
一体どこへ行ってしまったのか見当たらないのです。
それで結局今日は、うめはなと二人で、静かにあやとりなどをしています。
そしたらうめはなも「おうかげんきないね」というのです。
・・・ええ、今日の桜花は元気が無いのです。






橘花

 今日、甲板要員が妙なうわさをしているのを聞く。
彼らの話によると、あのドイツ電算機が帰り際に、桜花提督に、なんと・・・キスしたのだという。
しかも、唇><唇で。
何をふざけた事を。
最初は別に気にしないでいたのだが・・・なんだかだんだん気になってくる。
これは、桜花提督に直接確認してみないと、どうにも、いても立ってもいられないので、やっぱり聞いてみる事にする。
それで司令中枢でそういう戯言を話すのもなんなので、とりあえず私の部屋に彼女を呼んで聞いてみる。
当然そんな事実は無いと思っていたのだが・・・桜花提督は・・・ちょっと照れ笑いしながら「ええ、まあ」などと言う。
まさか・・・
・・・一体・・・そんなことって!
私は桜花提督の顔に手を触れた事も無いのに!
唇><唇って!
・・・私はもう、その場にはいられなくなって、・・・とにかくどこかへ走る。
その後どれくらい時間が経ったのか・・・
・・・気がついたら私は配線口の中にいる。
どうにも・・・涙が出て止まらない。
・・・涙が出て止まらない。
・・・・・止まらない。
・・・・・
・・・・・
・・・あの小娘・・・
・・・殺す。
・・・殺しても飽き足りぬ。














皇紀2666年 7月16日


桜花

 第1艦隊は呉港に到着しました。
いつもどおり全艦補給して、いつもどおり桜花は確認作業です。
でもなんだか、艦内の雰囲気はいつもと違うような気がします。
やっぱりあの、ドイツの人たちが来た事が艦内の隊員たちに変な疑問を抱かせてるのかもしれません。
これは何とかしなければならないと思うのですが、
桜花も状況がよく分かっていないのでどうしようもありません。
それで橘花さんに相談してみようと思ったのですが、橘花さんの顔を見てびっくりです。
なんというか、なんなんでしょうかこれは。
いつもきちんと後ろで結んでいる髪は、今日はぼさぼさで、目の下には隈が出来ていて、すごく怖いです。
一体どうしたのでしょうか。
これはきっと、・・・病気かもしれません。
すぐに医務室に行くように勧めたのですが、「大丈夫です」と言って動こうとしないんです。
でも心配なので熱を測ってみようかと思ったら「触らないでください!」って、怒るんです。
いったい、どうしてしまったんでしょうか。
橘花さん、すごく怖いです。
それで木島さんに相談してみようかと思ったのですが、木島さんはなぜか急用があるらしくて、港に着いたらすぐに艦から降りてしまったんだそうです。
木島さんが急用なんてめずらしいです。
シノさんも、なんだかここ二三日ぜんぜん動かないし。
誰にも相談できないです。
なんだか、もう泣きそうです。






橘花

・・・・・













皇紀2666年 7月17日


桜花

 第1艦隊は呉港にて待機中です。
艦内要員には休暇が与えられ、桜花にも一応条件付で上陸許可が出ているのですが、どうも外に出ようという気にはなりません。
飛鳥庵は閉まってるし参謀部の方々も休暇中、木島さんもまだ帰ってこないし・・・
橘花さんも部屋に閉じこもったままです。
橘花さん、一体どうしてしまったのでしょう。
とても心配なので橘花さんの部屋に行ってみたのですが、カギが掛かっていて中には入れません。
だから戸の外で呼んでみたのですが、橘花さんは「ほっといてください」って言うんです。
そう言われてしまうと・・・もうほっとくしかないですよね。
それでどうしようもなくて、桜花は今日も元気が無いんです。
桜花の元気が無いとうめはなも元気が無くなるみたいで、今日は結局、うめはなと二人で一日中部屋でごろごろしています。
ああ、曲がりなりにも連合艦隊提督が、こんな事ではいけないですよね。
・・・いけないです。






橘花

・・・・・













皇紀2666年 7月18日


桜花

 本日、軍令部より連絡がありました。
なんと、橘花さんが明日整備に出されてしまうのだそうです。
・・・これは、やっぱり・・・橘花さん、どこか具合が悪いのではないでしょうか。
すごく心配です。
でもとにかくこの事を橘花さんに伝えなければなりません。
ひょっとしたら橘花さんのことですから、部屋についている接続コードからもうこの事が伝わってるかもしれませんが、とにかく桜花は一度、橘花さんと面と向かって話をしなければならないと思うんです。
それで、今日も橘花さんの部屋に行ってみたんですが、やっぱり戸は閉まっていて、きっとカギが掛かっているはずです。
だからノックしようと思ったら・・・
・・・カギは掛かってない・・・?
今日はカギが掛かっていないです。
しかも、戸が少し開いてるんです。
びっくりしました。
それで戸の隙間から橘花さんを呼んでみる事にしました。
でも返事はありません。
何度も呼んでみたのですが返事が無いんです。
これは・・・
ひょっとして橘花さん、返事ができないくらい具合が悪いのではないでしょうか!
だとしたら大変です。
もう「入りますよ!」と言って桜花は部屋に入ってしまいました。
すると、部屋の中は真っ暗です。
橘花さん、どうしてしまったんでしょうか。
桜花はとても心配になってきて、とにかく真っ暗な中を手探りで奥へと入って行きます。
そしたら一番奥のベッドの方に小さく補助灯がついています。
その光の方を目を凝らして見てみると、どうやらそこに橘花さんがいるみたいです。
橘花さんはベッドに横になっている訳ではなく、ただそこに座っています。
でもちょうど光のシルエットになっていて、橘花さんの表情まではわかりません。
だから桜花は橘花さんの方に行って「具合が悪いんですか?」って聞いてみたんですが、橘花さんは返事をしないんです。
・・・まさか・・・橘花さん・・・
桜花はすごく心配になって、
「橘花さん!大丈夫ですかっ」
って叫びながら橘花さんの肩を少しさわってみます。
すると橘花さんは・・・何も言わずにただこくっとうなずきました。
ああ・・・よかった、橘花さん動かなくなってしまったわけでは無いみたいです。
でも、どう見てもいつもの橘花さんとは違うんです。
・・・なんだか・・・どう言ったらいいか分かりませんが、不思議な雰囲気です。
だから桜花は
「本当に大丈夫なんですか?」
って聞いてみたんですが、そしたら橘花さんは何も言わずに、桜花の手をぎゅって握るんです。
橘花さんがこんなふうに桜花の手を握るなんて・・・初めての事です。
それで、暗くてよく分からないんですが、橘花さんはじぃっと桜花を見てるんです。
いったい・・・橘花さん、どうしてしまったんでしょう。
よく見たら、橘花さん、ちょっと悲しい表情をしてるような感じもするんですが・・・
・・・しばらくすると、「しゅんしゅん」って音がするんです。
これは、うめはなが泣きそうになってるときの音みたいです。
・・・ひょっとして、橘花さんが・・・・泣いているのでしょうか。
すこし不思議になって、桜花は
「・・・橘花さん?」
って、もう一度よんでみたんです。
そしたらしばらくしてから橘花さんは、とても聞き取れないようなすごく小さな声で
「・・・提督・・・許してください・・・」
って・・・
・・・言ったのかもしれません・・・
・・・と、思ったら握ってる手と反対側の手で桜花の肩を強く押すので、桜花はベッドにどたっとひっくり返ってしまいました。
しかもその勢いで胸のボタンが3個ぐらい取れちゃったみたいです。
ちょっと・・・桜花は心配して部屋まで来たのに、それをいきなりひっくり返すなんて橘花さん、あんまりじゃないですか。
だから「なにをするんですか!」って言ってやろうと思ったんですが・・・
突然・・・
・・・・っ
・・・・橘花さんの唇が・・・桜花の唇と・・・その・・・え?
・・・・よく分からないんですが・・・なんだか・・・ちょっと・・・
・・・橘花さん?!・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・橘花さんがぎゅって握ったままの手と、
反対側の手はなぜか橘花さんの胸のところにあって・・・
・・・それで、すごく橘花さんの心臓の音が伝わってくるような・・・
・・・・・・
・・・ああ、橘花さんも生きているんだな・・・
・・・・って、実感できる感じ・・・
・・・橘花さんの反対側の手は、なぜか桜花の胸の取れたボタンのところから・・・
・・・・中に・・・・
直接触れているので、体温も伝わってくるんですが・・・
・・・ああ、でもそんなふうにされるとちょっと・・・
・・・・痛いですよ・・・
って言いたくても桜花の口は今橘花さんの口とつながってるので・・・
・・・言葉にしようとしても、どうにも、
「んんっ」とか「ん!」とか・・・
・・・そしたらぎゅって握ったままの手が少しずつほどけてきて、
その手が・・・
桜花のおなかから少しずつ下の方にきて・・・
・・・・そのまま・・・
・・・桜花のスカートの中に・・・・
・・・・
・・・って
・・・え?

「何をするんですか橘花さん!!」

気が付いたら桜花は橘花さんをガタン!と壁の方におもいっきり跳ね飛ばしてしまいました。
これはひょっとしてすごく痛かったかもしれませんが、そんな・・・なにがなんだかわけの分からないような事をされたら・・・ちょっと、力が入ってしまいます。
ていうか、今のは・・・いったい・・・状況が把握できないというか、とにかく混乱してしまって、なにがなんだか分からないですよ!
とにかく電気・・・部屋を明るくしないとだめです。
しばらく桜花はあたふたと電気のスイッチを探します。
どれだけあたふたしたのか、もう時間の感覚もよく分からないんですが、やっとの思いでスイッチを見付けて、部屋を明るくする事が出来ました。
・・・橘花さんは・・・
少し離れた床の上に、がっくりとうなだれたまま座り込んでいました。
少し・・・震えてるみたいです。
それで床にぽたっ、ぽたっと涙が・・・・
・・・橘花さんが・・・泣いているんです。
・・・これは・・・ひょっとして壁にぶつかってすごく痛かったのかと思いましたが・・・
・・・いや、そういう感じでは無いです。
桜花は橘花さんに何か言葉をかけるべきかと思いましたが、なにを言えばいいか分からなくて、しばらく考えてから結局「・・・大丈夫ですか?」って言いました。
その後もしばらく橘花さんはただ静かに泣いているだけだったんですが、よく聞いてみると、すごく小さな声で何か言ってるみたいです。
「・・・ひどいよ・・・」
「・・・あんなひととキスするなんてひどいよおうか・・・」
・・・って・・・一瞬、何を言ってるのか・・・て言うか、橘花さんの言葉じゃないかと思いましたが・・・確かに橘花さんがそう言ったんです。
さらにその後、なんと・・・橘花さんは普段の彼女からは想像も出来ないような荒々しい声で叫びだしたんです。

「あたしは!ずっとおうかのそばにいるのに!」
「ずっとまえからいっしょにいるのにぃ!!」
「なんであたしは・・・」
「あたしはおうかにあまえちゃだめなの?!」
「なんで?!」
「・・・あたしはずっと・・・」



・・・・・・・
・・・・橘花さん・・・じゃなくてこれは・・・うめはな?
・・・いや、これは橘花さんです。
確かに橘花さんなのです。
でもどう見てもこれは・・・だだをこねてる時のうめはなみたいなんです。
桜花はしばらく、ちょっと混乱してしまったんですが・・・でも、もしかするとこれが本当の橘花さんの思いなのかもしれません・・・。
そして橘花さんは、涙にぬれた子供のような眼差しで、じっと桜花を見るのです。
もしかして私は、ずっと橘花さんの事を勘違いしていたのかもしれません。
橘花さんはいつも冷静で、どんな事にも動揺しない強い人だと思っていたのですが・・・考えてみれば彼女も私といっしょで、まだこの世に生まれてから数年しか経っていない少女なのです。
不安になったらすぐに誰かに頼って、悲しくなったらすぐに泣いてしまう桜花と違って・・・彼女は艦隊司令機として、常に冷静に、毅然として、プライドをもって生きていて・・・
でも彼女も私とおんなじ、心を持って生まれた人型電算機なのです。
・・・ああ、それなのに私はその事に気付かずに・・・いや、なんとなく気付いていたのかもしれません。
橘花さんがたまに見せる悲しそうな視線とか、不安な表情とか・・・
でも彼女は強い人だから大丈夫だって・・・いつも桜花は橘花さんに甘えていたのです。
・・・それで、桜花一人で安心してたんです。
それでその負担は、常にずっと、橘花さんの方に掛かっていたのに、桜花はそれにぜんぜん目も向けないで・・・それで・・・
「・・・ごめんなさい、橘花さん・・・あなたの気持ちに気付いてあげられなくて・・・」
桜花は床に座ったままになっている橘花さんにそっと近付いて、頬の涙をちょっと拭って、頭をやさしくなでなでしてあげます。
そしたら橘花さんは、じっと桜花を見ていた視線をちょっと下げて、少し落ち着いたような顔になりました。
それで、いつもうめはなにしてるように、今日は橘花さんをやさしく抱きしめてあげます。
「・・・もう、なかないで・・・桜花も橘花さんが大好きですから・・・」
橘花さんは、まだちょっとしゅんしゅん言ってますが、桜花の胸にくっついて桜花の袖をぎゅっと握ってる彼女は、なんだかうめはなみたいにかわいいく感じます。
ああ、考えてみれば橘花さんと私は、同じ設計思想を基に作られた双子の姉妹みたいな物なんですよね。
でも橘花さんとは出会ったときからなんとなく見えない壁みたいな物があった様な気がします。
なんででしょう。
そういえば、うめはなも最初はそうでしたよね。
あの時は・・・確か、艦内のどこかに隠れてしまったうめはなを必死に探して、それで見つけ出して、泣きながら抱きしめてあげたんでした。
橘花さんの本当の心も、見付けてほしいと思いながら、ずっと隠れていたのかもしれません。
ああ、本当に長い間・・・
そう思うと・・・なんだか橘花さんがすごくかわいそうに思えてきて、「なかないで」って言った桜花がなんだか泣きそうになってきました。
その事に橘花さんも気付いたのでしょうか。
彼女は少し視線を上げて、桜花の顔をちょっと見てから、聞こえないような小さな声で、
「・・・ごめんね、おうか・・・」
・・・・って・・・・言ったんです。
謝らなきゃならないのは桜花の方なんですけどね。
でもなんだか言葉にならなくて。
とにかく今日は・・・・
・・・このままずっと、橘花さんをだっこしてあげます。
ずっと隠れていた彼女の心があたたまるまで。
・・・橘花さんが元気になるまで・・・






橘花

・・・・・













皇紀2666年 7月19日


桜花

 ・・・ここは・・・橘花さんの部屋です。
そう、昨日は橘花さんをだっこしたままこの部屋で眠ってしまったんですね。
橘花さんは、今も桜花の腕の中で眠っています。
くーくーとかわいらしい寝息は、まるでうめはなみたいです・・・
・・・・て、これ、
うめはなじゃないですか!
ああ橘花さんは、うめはなみたいになったのは話し方だけかと思ったら、なんと見た目までうめはなになってしまったのです!
これは大変です!
・・・と思ったら、橘花さんはベッドの横の椅子に座っています。
・・・え?橘花さんが二人?
すると椅子の方の橘花さんが「おはようございます。提督」って言いました。
彼女の話によると、昨日の晩、うめはなが「おうかがいない」と言ってごねていたので、ここにつれてきたのだそうです。
・・・じゃあ、桜花がだっこしてるのは、本物のうめはななんですね。
いやあ、びっくりしました。
それにしても今日の橘花さんは昨日とは打って変わって、桜花があげたリボンで髪もきちっと結んで、なんだか元気そうです。
それで、昨日ボタンが取れてしまった桜花の服にボタンを縫い付けてくれてるんですね。
こうやって見ると、やっぱり橘花さんは頼ってしまいたくなる雰囲気なんですよね。
そう思って、橘花さんの方をぼーっと見ていると、橘花さんは「なにか?」と言うのです。
ああ、いつもの橘花さんです。
それで、うめはなを起こさないようにそっと起き上がると、橘花さんがボタンをつけてくれた服を着ます。
やっぱり橘花さんって器用なんですね。ボタンのつけ方がすごく上手です。
そう言うと橘花さんは、ちょっとだけうれしいような顔をしました。
なんだか橘花さん、いつものように冷静沈着な橘花さんなんですけども、ちょっとだけ表情が明るくなったような気がするんですよね。
そうしてしばらく顔を洗ったりとかしていると、橘花さんはまじめな顔でそばによってきて、うめはなに聞こえないように小声で「昨日の事は・・・誰にも言わないでくださいね・・・」って言うんです。
もちろん。誰にも言いませんよ。
「でも、また甘えたくなったらいつでも言ってくださいね」と桜花が言うと、橘花さんは、すごく照れたような表情になって、ちょっとだけ笑ったんです。
・・・橘花さん、すごくかわいいです。
その後うめはなを起こして三人で朝ごはんを食べて・・・
そう、橘花さんは今日から整備に行かなければなりません。
なんだか今日は、その事がすごくさびしく感じます。
でも橘花さんは、なんだかすごく明るくて「どうせまた戻ってきますから」とか言って、すごく軽いです。
いつもの橘花さんだったら、整備の時はもう少し重い感じなんですけどね。
正午に迎えの旋翼機が来たので、飛行甲板まで橘花さんを見送りに行きます。
橘花さんの雰囲気とは対照的に、今日の桜花は、橘花さんが整備に行ってしまうことがすごくさびしいと言うか、なんだか不安なんです。
なぜでしょう。
もうあえなくなるわけでも無いのに。
それで、いつものように橘花さんはきちっとした姿勢で
「橘花中将、整備の為旗艦を離れます」
と言って敬礼し、旋翼機に向かいます。
それで乗り込む前に一度振り返って、また少し悲しいような表情をするのかと思ったら、今日はとても明るく、にこっと笑ったんです。
橘花さんのこんな素敵な笑顔、初めて見ました。
ちょっとドキッとしてしまうくらいです。
いつも物静かな艦長さんも思わず「ほほお」とうなってしまうくらいですからすごいです。
やっぱり橘花さんって・・・・素敵です。
それで橘花さんは旋翼機に乗って行ってしまったんですが・・・・
なぜだか桜花は・・・・橘花さんを乗せた旋翼機が見えなくなるまで、ずーっと見てしまうんです。
うめはなに「どしたの?」って聞かれて初めて我に返ったんですが・・・
・・・今日はなぜこんなに・・・橘花さんがいなくなることが不安になるのでしょう・・・
不思議です。






 ・・・・・
・・・・それでも、あなたは・・・
やっぱり、私の心を分かってはいない・・・・
・・・私があなたを愛しているという事を・・・・
・・・分かってはいない・・・
・・・・・
・・・でも・・・いい。
私をやさしく抱きしめてくれたから。
・・・あなたはとてもやさしい人。
・・・・・
・・・やさしいひと。
・・・・・














皇紀2666年 7月20日


桜花

 今日も桜花は何もする事がありません。
まあ入港中は基本的に何もする事が無いのはいつもの事なので結構慣れてきたのですが、今日は特に何かをしようという気にもなりません。
ただ、窓から外を見て、ぼーっとしています。
それで、なぜか橘花さんのことを考えてしまいます。
なぜでしょう。
もちろん橘花さんが整備に出されてる時は、いつもちょっと寂しいのですが。
今日は特に寂しいような、不思議な感じです。
うめはなも「おうかこのごろへんだよ」って言ってました。
へんなんでしょうかね。




















皇紀2666年 7月21日


桜花

 今日、木島さんが飛鳥に帰ってきました。
艦を降りる前には額にしわを寄せてすごく深刻な顔をしていたので、ちょっと心配だったのですが、今日の木島さんはいつもどおり、ちょっと笑ったようなにたにたした感じなので安心しました。
それでもう桜花は、いろんなことがあって不安で木島さんに相談したい事がいっぱいあるのです。
とりあえず最初に橘花さんのことを相談しようかと思ったのですが、そういえば!・・・橘花さんがうめはなみたいに泣きわめいたり、一晩中だっこしてあげたりしたことは二人だけの内緒だったんですね!
ああ、ついうっかり話してしまうところでした。
どうしてこう、桜花は隠し事が苦手なんでしょうね。
それでちょっとだけおたおたしてから、ドイツのアドルフィーナさんについて相談する事にしました。
そもそも全ての元凶はあの人が突然飛鳥に来て自分勝手にいろんなことしたりするから、なんだかいろいろとおかしなことになってきたのです。
大体、なんでドイツが人型電算機を保有してるのでしょうか。
いや、それよりももっと重要な事は、そのドイツの電算機が、連合艦隊旗艦の電算機に接続しようとした事を、軍令部は許可していたという事です。
こんな滅茶苦茶な事が、あっていいわけありません。
そういう話をしていると、やっぱり木島さんは額にしわを寄せてちょっと深刻な顔になったような気がしたのですが、でも話し終わった頃にはまたいつものにたにた顔に戻って「まあ、お上のやってる事だからネエ。俺らがいろいろ考えてもしょうがないんじゃネエか」なんて言うのです。
しょうがないって・・・そんなあっさりしてて良いんでしょうか。
まあ、確かに、私達がいろいろ考えても、何かを変えられるわけでもないのかもしれませんが。
その後木島さんは「世の中全てが正攻法でうまく行くなんてことはネエんだし。お上はお上でいろいろ取引ってもんがあるんだよ」なんて言ってました。
そうなんでしょうかね。
それで良いんでしょうかね。
でも、木島さんがそう言うなら・・・それで良いのかもしれません。
なんだか、納得できない部分も多々あるのですが・・・
なぜか木島さんに話をしたら、今までの不安感はすっかり取れてしまいました。
ああ、私ってやっぱり単純なのでしょうか。




















皇紀2666年 7月22日


桜花

 今日も桜花はする事が無いので、艦橋からぼーっと港の風景を見ています。
今日も何事も無く穏やかな呉港・・・かと思ったのですが昼過ぎになって突然、警戒態勢を示すサイレンが港じゅうに響き渡ります。
そして港内にいた警備艦隊の艦艇が多数、勢いよく港を出て行きました。
何かあったのでしょうか。
桜花もとりあえず艦の司令中枢に入り、そこにいた参謀部の方々に何かあったのか聞いてみたのですが、現在の所、特に連絡は受けていないそうです。
でも何か変わったことがあったのは確かなので、桜花は艦の電算機と接続して情報を取ろうと思ったのですが、なぜか飛鳥の外部接続が切られているらしく、艦隊情報が全く入ってきません。
・・・これはおかしいですね。
飛鳥の電算機が起動している状態で、外部接続だけが切れてるなんて事は今まで無かったのですが。
その後しばらくしてから、なぜか休暇中だった第1艦隊の艦内要員達がどやどやと急いで戻ってきました。
彼らに話を聞いてみると、どうも警戒待機命令が発令されたらしく、それで急いで戻ってきたのだそうです。
警戒待機って、一体何があったのでしょうか。
その後、準備の整った艦から急ぎ機関を始動し待機します。
飛鳥も機関始動し、出港準備完了です。
でも、そんな状況になっても、未だ飛鳥の外部接続は切れたままなのです。
これは一体どういうことなのでしょうか。
これだと機関始動しても、港から出る事も出来ないじゃないですか。
参謀部の方々も困惑の表情を隠せない様子で、無線電話で外部からの指示を仰いだりしてましたが、結局これといった情報は入ってきません。
その後、なぜか突然、軍令部の人たちが飛鳥の司令中枢に入ってきたのです。
この状況で軍令部の人が来たのでみんなちょっと驚きだったのですが、ひょっとしたら彼らなら、飛鳥の外部接続が切れている理由を知ってるかもしれないので、いろいろ聞いてみたのですが、彼らは「現在はそれを説明する事は出来ません」というのです。
これには野田さんも大怒りで「中枢母港の警戒時にあって連合艦隊旗艦中枢にも説明出来ぬとは如何なる事か!」って怒鳴っていましたが、その後の軍令部の人の話はもっとびっくりです。
なんとこの状態で、突然、今日から桜花は整備に入るというのです。
しかも、うめはなも一緒に整備なのだそうです。
という事はつまり・・・・
警戒態勢時に連合艦隊旗艦に人型電算機が一人もいなくなってしまうではないですか!
これは絶対おかしいです。
とにかくきちんと説明してほしいのですが。
でも軍令部の人は「後ほど状況は説明します」「今は時間がありませんので」の一点張りで。
そうこうしてるうちに、桜花は移動仮死状態にされてしまうのです。
ああ・・・だんだん意識が遠くなっていくのです・・・







・・・・・
 ・・・・・
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 ・・・・・asduhs暗い海の中を・・・・as;hqu静かsdkflm;oi4に潜る・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・そして彼女を・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・















皇紀2666年 7月23日









 ・・・・・
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皇紀2666年 7月24日









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皇紀2666年 7月25日









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皇紀2666年 7月26日


桜花

 桜花の突然の整備は終了したらしく、うめはなと一緒に旋翼機で本日、戦艦飛鳥に戻ります。
現在第1艦隊は、第7機動艦隊と共に、警戒態勢のままアッツ島の南約350海里の位置を北上中です。
これは遂に、米国と戦闘状態になってしまったのかと思ったら、実はそういうことではなく、警戒態勢になっているのはこの海域の艦隊と本土防衛の艦隊のみなんだそうです。
でも異常な状態である事は確かなので、とにかく飛鳥に到着したら急いで司令中枢に入ります。
それで、うめはなと一緒に司令中枢に入ると、警戒態勢であるにも拘らず、なぜか皆さん席を外れて大喜びです。
・・・これは?一体どうした事でしょう。
そして木島さんも
「状況が状況だけに、桜花ちゃんもスクラップにされちゃったのかと思ったよ」
なんて言うのです。
スクラップって・・・一体どういうことなのでしょうか。
とにかく飛鳥の電算機と接続し(今は外部接続も通常通りに戻ってるみたいです)参謀部の方々から状況の説明をしてもらいます。
それで現在どういう状況になっているのかというと、なんと、帝国海軍に所属する艦隊のひとつが、交信不能状態に陥り、この艦隊が異常行動を起こしているのだそうです。
これはまた・・・なんとも訳の分からない事です。
でも状況はかなり深刻な状態らしくて、現在すでにこの艦隊によって、帝国海軍軍令部直隷下部隊の駆逐艦が2隻撃沈されてるのだそうです。
これは・・・深刻な状況です。
それで、一体どの艦隊がそんな事をしているのかと思って現在の司令電算情報を見てみたのですが、別に全艦正常で、全ての艦隊が通常通り旗艦の指揮下にあるみたいなのです。
それでは一体・・・その異常行動を起こしてる艦隊って、なんなのでしょうか。
実はここからの話が驚愕なのです。
かなり以前の話になるのですが、どうしても捕捉出来ない謎の艦隊と、何度か模擬艦隊戦を行った事がありましたよね。
(確か最後に行ったのは去年の2月あたりだったでしょうか)
なんと、今回異常行動を起こしてる艦隊というのは、これの事なのです。
あの艦隊の隠密性の高さは、何度かの模擬戦をやって分かっているので、あれが異常行動を起こしたとなると・・・・ちょっと背筋が寒くなります。
でも、木島さんが軍令部の人から聞いた話によると、もちろんあの艦隊はもともとかなり隠密性が高く造られてはいるのだそうですが、現在の帝国海軍の通常艦の能力で、それを全く捕捉出来ないという事はないのだそうです。
ではなぜ、模擬艦隊戦のときに全く捕捉出来なかったのでしょうか。
実は模擬艦隊戦の時も、捕捉は出来ていたのですが、なんと、その捕捉情報が飛鳥の司令電算機に認識できないように設定されていたのだそうです。
・・・それは・・・驚きです。
ていうか、なんでそんな、認識できないように設定する必要があったのでしょうか。
木島さんも、その訳を軍令部の人に聞いてみたのだそうですが「最高度極秘情報」という事で、教えてはくれなかったのだそうです。
でも、今後の任務を遂行するに当たり、必要とされる情報だけはきっちり教えてくれたそうです。
この捕捉出来ない艦隊は、連合艦隊から独立した軍令部直隷下の艦隊で正式名は無く、通称「第0艦隊」と呼ばれているそうです。
この第0艦隊は、1隻の司令潜水艦と5隻の攻撃型潜水艦の計6隻で構成され、全艦新型の極めて消音性の高い推進器を搭載し、何より特徴的なのはその武装で、その艦隊に装備されてる武装は対重装甲貫徹用に特殊改良された潜水発射型対艦誘導弾と魚雷のみで、その他の装備はほとんど付いていないそうです。
これはつまり、これだけの隠密性をもった艦でありながら、その任務は、およそ戦艦並の重装甲を持った艦を撃沈する事のみに特化しているという事です。
また、装備をひとつに絞っただけあってその搭載量は潜水艦隊としては非常に多く、第1艦隊でも隠密裏に近くまで接近されて攻撃を受ければ、迎撃装備は飽和状態となり、旗艦を防衛できないのだそうです。
現在では飛鳥の電算プログラムを変更して、この第0艦隊の捕捉情報を認識できるようにしたので、発見されずにそこまで旗艦に接近される事は無いのですが、やはりそれでも隠密性の高い艦隊なので、危険である事には違いありません。
・・・ここでふと思ったのですが・・・・
飛鳥の電算機では捕捉情報が認識できないように設定されていて・・・そして戦艦を撃沈する事のみに特化した装備を搭載している・・・という事は・・・
・・・まさか・・・
この第0艦隊って、戦艦飛鳥を撃沈する為に造られた艦隊なのではないでしょうか・・・
木島さんも、私をじっと見ながら「・・・やっぱりお前もそう思うか・・・」って言うんです。
それはつまり・・・もしかして、桜花が艦隊司令中に異常行動を起こした際の対応策・・・
という事なのでしょうか・・・
・・・そんな事って・・・
戦艦飛鳥には桜花以外にも、千人以上の搭乗員が乗っているのですよ!
それを撃沈するなんて事・・・もちろん万が一の対策なのでしょうが・・・そんな事を軍令部が考えていたなんて思うと、ちょっと、ぞっとします。
でも、木島さんも言っていましたが、これはあくまで推測なので、あまり先走って考えるのも良くないです。
じゃあこれは・・・あまり考えない方が良い事なのでしょうか。
それでまた第0艦隊の話なんですが、ここでまた驚きの事実です。
なんとこの第0艦隊、6隻もの潜水艦隊でありながら、現在、全くの無人なんだそうです。
全くの無人って・・・人が全く乗っていない艦隊を、どうやって動かしてるのでしょうか。
実はこの第0艦隊は、開発当初から司令電算機を搭載する事を前提に造られた艦隊で、通常は極少数の艦内要員を乗せて運用するのですが、艦隊の全ての装置はこの司令電算機によって全自動で制御が可能なのだそうです。
これはすごいです。
つまり今回、なぜこの第0艦隊が異常行動を起こしているのかというと、この艦隊の司令艦に搭載されている司令電算機が故障した為なんですね。
やはり司令電算機による完全自動制御というのは無理があるのでしょうか。
それで先日、7月22日に、飛鳥の外部接続が切られたり、その後桜花とうめはなが突然整備に出されたりしたのは、第0艦隊の電算機が異常行動を起こしたので、同じ司令電算機である桜花やうめはなも、もしかしたら突然異常行動を起こして艦隊を変なふうに動かしたりする可能性があるので、そのための対応だったわけです。
でも今また艦隊に通常通り戻されたという事は、桜花とうめはなには異常は無かったという事なのでしょうかね。
(ていうか、つまり第0艦隊に搭載されてる司令電算機って、桜花の電算機と同じ要素があるという事なのでしょうか)
それで、軍令部は一昨日の段階でこの第0艦隊の制御復帰を諦めたようで、これを自らの隷下部隊により撃沈を試みたそうですが、対重装甲装備ではあっても、なにせ司令電算機搭載艦なので全く歯が立たず、それで、同じく司令電算機を搭載するこの第1艦隊にこの撃沈任務を委託してきたわけなんですね。
全く、散々勝手なことをやって最後は他人任せなんて、ひどすぎます。
ということで、桜花とうめはなはこれより直接続に入り、作戦開始です。
現場が米国領海近くという事もあって作戦遂行は極めて速やかに行う必要があり、また「第0艦隊の損傷は出来るだけ少なく抑えるように」との軍令部命令ですが、この状況で今さら何を言ってるのですか。
飛鳥を沈めるために造った艦なんて、完膚なきまでに壊してしまえば良いのです。
どうせ無人なんだし、もう手加減なしでぼこぼこにやっつけてやります。
・・・・・
・・・・そういえば、今気付いたのですが、
橘花さんはまだ整備から戻っていないのですね。






 ・・・・・
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 ・・・・・














皇紀2666年 7月27日









 ・・・・・
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 ・・・・・














皇紀2666年 7月28日









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皇紀2666年 7月29日









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皇紀2666年 7月30日


桜花

 作戦は完了しました。
もっと時間が掛かるかと思ったのですが、案外短時間で終わったので良かったです。
やはり、捕捉出来ない事が取り得である艦隊を、最初から捕捉出来る状態だったので、およそ優勢に作戦を進める事が出来ました。
また、この第0艦隊は対水上艦戦闘では非常に強いのですが、装備の都合上、対潜水艦戦闘では比較的弱く、潜水艦部隊を前面に展開すれば、こちらは攻撃を受けることなく相手を攻撃できるのです。
しかし、やはり司令電算機を搭載してるだけあって、そうそう一筋縄では行かず、一時、敵は攻撃艦を囮にして潜水艦部隊の間をすり抜けて、司令艦を飛鳥の近くまで突進させてきたのですが、その時なぜか、敵司令艦は誘導弾を発射しなかったので、逆にこちらの駆逐戦隊の猛攻撃で、完膚無きまでに破壊してやりました。
あそこで敵司令艦に誘導弾を発射されていたら、もしかしたら大きな被害がでていたかもしれませんが、結局こちらの損害は全く無く、第0艦隊を全滅させる事が出来ました。
ということで作戦完了です。
ただ、この第0艦隊の内部には帝国の最新鋭技術が投入されているので、米国などにその残骸を回収されてしまっては大変なので、軍令部直隷下部隊は当海域に留まって、残骸の回収をするのだそうです。
でもこの辺は結構深いので、そう簡単には回収できないと思いますけどね。
連合艦隊も一部その護衛任務に就くのですが、第1艦隊はこのまま呉に戻ります。
桜花は、今日はなんだかとても疲れたので、もう寝ます。








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皇紀2666年 7月31日


桜花

 本日突然、軍令部からの指示で、桜花は再び集中整備に出される事になりました。
一体、なんなのでしょうか。
軍令部の説明によると、脳内情報に異常が無いかどうかもう少し綿密に調べてみる必要があるとの事ですが、桜花はもう軍令部の事が全く信用できなくなってしまいました。
軍人として任務を遂行するのに、そういうことではいけないと思うのですが、やっぱり状況が状況だから仕方が無いです。
今回はうめはなも一緒ではなく、桜花一人だけの整備です。
ということはつまり、うめはなは問題ないということなのでしょうか。
でも、この状態でうめはなと別れ別れになってしまうのはとても不安です。
うめはなもすごく寂しそうな顔をしていますが、やはり軍令部の指示には従うしかありません。
それに・・・一番心配なのは、橘花さんが未だに整備から戻ってこないという事です。
今までにも、整備にすごく時間が掛かってなかなか戻ってこない事は度々あったのですが、今回は、なぜかすごく不安なんです。
橘花さん・・・何事も無ければよいのですが・・・







 青い水の中・・・・ぼんやりと赤く、光る。
その人は、私を見てるのかと思ったが・・・・
それは・・・・ガラスに映る、私の目・・・・
・・・・・







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