皇紀2665年 4月1日








橘花

 模擬艦隊戦が開始される。
まあ、今回私には特に仕事がないので、とりあえず梅花の様子を見てみる。
接続後、梅花はしばらく沈黙して思考していたのだが、その後、奇妙な動きを見せる。
この新型機は、司令電算機に接続されると、全く人格が変わるのである。
今までの幼稚な言葉使いが一変して的確になり、ある種、貫禄のような物まで醸し出している。
また、どういう意味があるのか分からないが、瞳の奥が紅い色に光っている。








皇紀2665年 4月2日








橘花

 昨日は梅花の変化した人格に圧倒されて全く忘れてしまっていたが、作戦初日から艦隊は奇妙な動きを見せている。
全ての艦が四方八方に大きく分散している。
ここまで大きく分散すると、もはや艦隊としての相互防衛は出来ず、各艦の自衛装備のみで戦わねばならない。
唯一艦隊を組んでいるのは、旗艦「飛鳥」と空母「蒼龍」、そして護衛の「朝霧」のみである。
また、この場合、航空母艦は敵の最終目標である硫黄島からは出来るだけ離れるべきかと思われるが、なぜか離れはせず、かと言って付きもせずという微妙な位置で留まっている。
一体、彼女は何を考えているのだろうか・・・。








皇紀2665年 4月3日








橘花

 作戦開始から三日目、既に駆逐艦2隻が撃沈されている。
駆逐艦はまとまった艦隊を組んでいない上、なぜか空母も迎撃機を発進させていないので、ほぼ敵と遭遇した直後に撃沈されている。
しかし、艦隊を組んでいない分、発見されても撃沈されるのは一隻のみである。
ただ、このまま行けば、そのうち旗艦が攻撃されるのも時間の問題かと思われたが、なぜか敵は硫黄島方面への侵攻を止めてしまった。
その後、友軍空母「蒼龍」では航空機の発進準備が成されるが、これもまた奇妙で、艦爆隊わずか1小隊のみ対艦装を施し、あとの機には武装を全く装備せず、大型増装タンクを装備、そして給油機能を搭載できる機体には大型増装及び給油装置を装着する。
これはまるで、友軍空域での長距離移動装備である。
また同時に、分散していた駆逐艦が南方に向い集結を始める。
しかし、旗艦と空母は全く動かず、硫黄島の近くに留まったままである。
何をするつもりなのか、全く予測できない。







皇紀2665年 4月4日








橘花

 本日未明より、空母「蒼龍」の艦載機のおよそ半数が発進。
一度大きく南下し、その後進路を北に戻した所で全滅。付近の空港に下ろされる。
武装を施していないので、当然敵側には損害無し。
梅花の指示に黙って従っていた参謀陣も、この行動にはやや困惑を表す。
これが模擬戦でなければ、かなりの損害である。








皇紀2665年 4月5日








橘花

 南方の海域にて集結を完了した駆逐艦隊が転進し、北上しながら海域探索を始める。
今までの敵航空機の出現地点から判断すると、この駆逐艦隊は敵艦隊に近付きつつあると思われるが、友軍空母艦載機の護衛の無い状態でのこの探索行動は極めて危険な行動と言わざるを得ない。
むしろ自殺行為である。








皇紀2665年 4月6日








橘花

 今日、朝起きてみると、なんだか妙に艦内がざわついている。
司令室に行ってみると、梅花は既に接続を解除されていて、近くのソファーで寝ている。
何事かと思い、木島中将に状況を聞いてみると、なんと驚きである。
模擬艦隊戦には我が第1艦隊が勝利したのだと言う。
あれだけひどい状態から、一体どうやって勝利したのかというと、実は今までの奇妙な行動と多くの損害は、去年桜花提督がやった作戦を、今回もやるだろうと敵に思わせる為の行動だったのである。
つまり、前回桜花提督は、硫黄島を護る様に見せかけて実は大きく後退し、そして敵の後方に大きく回りこんで攻撃し、勝利したのだが、今回の梅花の作戦は、敵の後方に大きく回りこんだように見せかけて、実は硫黄島近辺にいた空母航空隊による攻撃で、敵揚陸戦隊を撃沈したのだと言う。
開始直後に艦隊を分散させたのは、硫黄島近辺にいる艦を少数の囮だと敵に思わせる為の戦術で、また、航空隊に武装を外して積めるだけの燃料を搭載し、大きく南方に回りこんで敵艦隊に接近させたのも、わざわざ駆逐艦を南方で集結させて探索行動を行ったのも、敵に第1艦隊主力が南方にいると思わせる為の戦術だったのである。
そして最終的に、探索行動中の駆逐艦隊が敵に発見されると同時に、燃料のみを積んだ航空隊を南方から敵艦隊に接近させ、捨て身戦法で敵揚陸戦隊の正確な位置を捕捉、その直後、対艦装備の艦爆隊を発進させ、空母は南にいると思いこんでいる敵の北側から攻撃し、撃沈したのである。
 去年の模擬戦で桜花提督が行った作戦は、負けるはずが無いと思っていた第8艦隊首脳陣にとってはその戦術が大きな印象を残す結果となった。
そしてその心理状態を巧みに利用したのが、今回の梅花の作戦だったということである。
まだ完成してから間も無いにも拘わらず、人の心理状態までも戦術に加えてくる、この新型機「梅花」は、かなりの高性能と言えるが・・・
しかし、勝利条件を満たす為に、友軍戦力をほぼ壊滅させてしまうとは、あまりにも冷酷な作戦である。
少女のあどけない寝顔が、妙に恐ろしく見える。








皇紀2665年 4月7日








橘花

 第1艦隊は予定より早く呉に向う。
梅花はよく眠った為か、今日も朝から元気である。
艦内をいろいろと連れ回され、もう昼前にはくたくたになってしまった。









皇紀2665年 4月8日








橘花

 第1艦隊は瀬戸内海に入る。
明日には呉に入港の予定。
また梅花に付き合わされるとたまらないので、今日は自室にこもっている。
そしたら今度は木島中将になついたらしい。
艦内をいろいろと連れ回されていたようだ。
木島中将も忙しいかと思うのだが。
でもなんだか嬉しそう。








皇紀2665年 4月9日








橘花

 第1艦隊は呉に入港、全艦補給。
桜花提督はいつになったら戻ってくるのだろう・・・








皇紀2665年 4月10日








橘花

 艦内要員には休暇が与えられ、私には要警護付きで上陸許可が出る。
しかし、新鋭機梅花には上陸許可が出ない。
結局、「外に出たい」と言ってごねる梅花の遊び相手を参謀部総出でやる破目に・・・
なんだか最近、艦内はすっかりこの子のペースに飲まれてしまってる様だが。
参謀達はなぜか嬉しそう。








皇紀2665年 4月11日








橘花

 ここでの私の上陸可能期間は本日一杯で終了らしいが、重防弾装備をしてまで外に出たくないので、今日も結局艦内にいる。
梅花はごねても外に出られないと言う事を覚ったらしく、今日は幾分おとなしい。
飛鳥庵のカウンターで折り紙などをやっている。
ただ、あまりにも不器用で、何を作っているのかさっぱり分からないので、折り鶴の作り方を教えてみる。
私の膝に座って一生懸命作り方を覚えようとしている彼女は、なんだかちょっとかわいい様な気もする。
・・・が、
折り紙かと思っていたこの紙、実は帝国海軍の極秘文書である!
この少女は、なんという恐ろしい事を・・・
即刻取り上げて、とにかくなんとか元通りにしておく。
これは厳重注意である。








皇紀2665年 4月12日








橘花

 艦内で寂しがっている梅花の為に、今日木島中将が「エゾモモンガ」という物を艦内に連れて来た。
元々野生の小型哺乳類を家庭飼育用に改良した物ということだが、梅花はもう大喜びである。
エゾモモンガもすぐに梅花に懐いたらしく、もう二人(と言うか2匹)そろって艦内を大暴れである。
木島中将は「梅花ちゃんが元気になって良かった」などと言って喜んでいるが、この暴れ様はちょっと考え物である。
湯飲みなどを置いとくと割られるので、落ち着いて茶も飲めない。
とにかく、司令部などの重要区画には絶対に入れないようにしなければ。








皇紀2665年 4月13日








橘花

 明日から私は整備の為移動。
なんだか最近、やたらと整備が多いような気がするが。








皇紀2665年 4月14日
















皇紀2665年 4月15日
















皇紀2665年 4月16日
















皇紀2665年 4月17日
















皇紀2665年 4月18日
















皇紀2665年 4月19日








橘花

 整備完了。
第1艦隊は既に呉港を出て、次の訓練海域に向っている。
桜花提督は戻って来てるかと思ったら、まだ戻って来てはいないらしい。
なんだかとても心配である。
艦内では、梅花とエゾモモンガが相変わらず元気に飛びまわっているが、それ以外は特に問題無し。








皇紀2665年 4月20日








橘花

 今回の補給の際、民間の兵器会社から人型電算機用装備の試供品の搬入があったということで確認しに行く。
なにやら厳重に包装されているので何が入っているのかと思ったら、一見普通のニーソックスである。
しかし補給班の話のよると、これは普通のニーソックスではなく冷却効果のあるニーソックスなのだそうである。
なんだかとても怪しいが、とりあえず部屋に持って帰る。








皇紀2665年 4月21日








橘花

 第1艦隊は東鳥島の南西350海里の訓練海域に向い航行中。
明日には第12機動艦隊と合流の予定。
艦隊が徐々に南下して来た為か、甲板に出ると少し熱い。
そろそろ保冷剤の確保をせねばと思ったが、そう言えば昨日試供された冷却式のニーソックスの事をすっかり忘れていたので、験しに部屋に戻ってはいてみることにする。
あまり期待もしていなかったのだが、これは意外と良いかもしれない。
冷え過ぎもせず、なにより保冷剤を入れなくてもよいのでかさばらず、歩きやすい。
問題は耐久性だが、然程高価な物でも無いので、とりあえず黒4足と桜花提督用に白4足を発注しておく。








皇紀2665年 4月22日








橘花

 第12艦隊と合流。訓練海域にて待機。
今回も模擬艦隊戦だが、また例によって敵役艦隊の所属は明らかにされず。
今までの状況から考えると、恐らくあの、捕捉出来ない艦隊が相手になるのだろうと思われる。








皇紀2665年 4月23日




 巨大な何かになって・・・深く、潜る・・・
この感覚・・・・以前にも・・・・






橘花

 本日夜間より直接続に入り、明日未明より訓練開始。
今回はなんだか、接続の仕方が奇妙である。
この新鋭機「梅花」は通常人型電算機としての使用の他、人型電算機の支援機能という物が付いているらしい。
従って、その接続方法も特殊で、艦隊司令電算機に私と梅花が同時に接続されるのだが、私にはなにやら光波受信機という物が取り付けられ、梅花が発する光波情報が受信できるようになるのである。
梅花の目が赤く光っているのはこの為で、梅花と視線を合わせるだけで多量の情報交換が可能になるのである。
いや、正しくは、私は光波送信が出来ないので、梅花からの情報を一方的に受け取るだけなのだが。
将来、この新鋭機が多数配備されるようになると、もはや電算機同士の情報交換に言葉は必要無くなるのだろうか。
少し・・・羨ましい。








皇紀2665年 4月24日
















皇紀2665年 4月25日
















皇紀2665年 4月26日
















皇紀2665年 4月27日




 ・・・この位置までなら、近付いても見付からない・・・・
次は・・・・もう少し近付いて・・・・














皇紀2665年 4月28日
















皇紀2665年 4月29日
















皇紀2665年 4月30日
















皇紀2665年 4月31日




 あれのことはよく分かっているから・・・・
・・・もう少しここで待てば必ず機会はある筈・・・・
・・・この体なら・・・





橘花

 整備の為接続解除。
敵艦隊はやはり発見できない。
どれだけ電算機の性能が上がろうが、艦その物の性能に大きな差があるのであればどうしようもない。








皇紀2665年 4月32日
















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